国防総省の長年にわたる姿勢を無視するヘグセス
アメリカはもともとキリスト教の国だと、ヘグセスは何度も言っている。だが建国の父たちの多くは、教会のドグマよりも理性を重んじる「理神論」に傾斜していたし、そもそも合衆国憲法修正第1条には「信仰の自由」が掲げられ、政教分離が明文化されている。
だからこそ国防総省は長年にわたり、特定の教義を軍隊に持ち込まないよう努めてきた。それを無視するヘグセスの姿勢は憲法に反しているとの批判もある。
だが、今やヘグセスは国防総省の演壇に立ち、全ての国民に「ひざまずき、家族と共に、学校で、教会で、イエス・キリストの名において」、イスラム教徒の支配するイランとの戦争における勝利を祈るよう命じている。こんなキリスト教国家主義の言説がまかり通るようなら、いずれアメリカの安全保障や国内政治にも深刻な影響が出る。
国防長官に登用されるずっと前から、ヘグセスはキリスト教の中でも極右に属する見解を口にしてきた。しばしば十字軍に言及し、DeusVult(神がそれを望まれる)のタトゥーも入れている。2020年の著書では「われらキリスト教徒は、ユダヤの友人たちと共に剣を取り……イスラム主義を文化的にも政治的にも地理的にも押し返さなければならない」と記し、「教育や宗教、文化を支配する左派分子を追い払うべき」だとも述べている。
ヘグセスはイスラム嫌いを隠そうともしない。著書の中でイスラムは「平和の宗教ではない」と断じているし、15年にはオハイオ州のバーで泥酔し、「イスラム教徒は皆殺しだ!」と叫んだとされる。
こうした過去のある人物が、今はイランとの戦争に関してやたら宗教的な物言いをし、西洋文明をイスラムから守れという年来の主張を広めようとしている。