シーア派国家イランとスンニ派過激組織アルカイダ──本来は相容れない両者が、反米という利害で数十年にわたり戦略的関係を維持してきた。現在の対イラン軍事行動は、対テロという側面も
反米という利害で一致するシーア派国家イランとスンニ派過激組織アルカイダは長年、戦略的共生を続けてきた。米軍の対イラン攻撃からは対イランだけではなく、対テロという視点も見えないわけではない。
宗派を超えた「反米」という冷徹な地政学的論理
イランとアルカイダの関係は、国際政治における最も逆説的かつ複雑な協力関係の一つである。本来、厳格なシーア派国家であるイランと、サラフィージハード主義を貫くスンニ派の過激主義組織であるアルカイダは、思想的には決して相容れない敵対関係にある。
しかし、一見すると水と油のような両者は、数十年にわたり、利害が一致する局面においては戦略的な便宜供与を繰り返してきた歴史を持つ。この冷徹な地政学的論理を理解することは、現代の中東情勢を読み解く上で不可欠である。
両者の接点が初めて公に確認されたのは1990年代に遡る。当時、アルカイダが拠点を置いていたスーダンにおいて、イランの影響下にある武装組織ヒズボラが、アルカイダのメンバーに対して爆発物の製造や大規模なテロ戦術の訓練を施したとされる。
この時期の協力関係は、共通の敵である米国を中心とした西側諸国に対する対抗手段を構築するという、極めて実務的な動機に基づいていた。宗派間の対立よりも、反米という共通項が優先された形である。
実際、1998年に発生したケニア・タンザニア米大使館爆破事件においても、イラン側から技術的な支援が流れていた可能性が当時の捜査報告書などで指摘されている。