イラン国内に潜伏する最高指導者と国家の容認
2001年の米同時多発テロ事件後のアフガニスタン戦争は、両者の関係を新たな段階へと押し上げた。米軍の攻撃によってタリバン政権が崩壊し、アルカイダが拠点を失うと、多くの指導部幹部やウサマ・ビン・ラディンの家族を含むメンバーが国境を越えてイランへ逃げ込んだ。
イラン政府は彼らを直ちに処刑したり米国へ引き渡したりするのではなく、国内の施設に収容し、ある種の軟禁状態に置いた。
これはテロリストに対する温情ではなく、米国との交渉における強力なカード、あるいはアルカイダによるイラン国内への攻撃を抑止するための人質として利用するためであったと考えられる。この期間、イランは国際社会に対して彼らを「拘束している」と説明しつつ、必要に応じて彼らの外部との連絡を黙認するなど、極めて戦略的な運用を行ってきた。
この長年にわたる潜伏と管理の歴史を経て、現在、アルカイダの事実上の最高指導者とされるセイフ・アル・アデルがイラン国内に滞在しているという事実は、国際安全保障上の1つの懸念となっている。
エジプト軍の元特使であり、組織内で最も経験豊富な戦略家の一人とされるアデルは、2022年にカブールでアイマン・アル・ザワヒリが米軍の無人機攻撃により殺害された後、後継者としての地位を固めた。
国連の専門家パネルや米国の情報機関による報告書は、アデルがイラン国内から世界各地の支部へ指令を出しており、ある程度の行動や通信の自由を認められていることを示唆している。
ザワヒリがアフガニスタンで命を落としたのに対し、アデルが長年イランの庇護下で生存し続けている事実は、組織の運営におけるイランの重要性を示している。
イラン側はこれらの疑惑を一貫して否定しており、自国はテロの被害者であるという主張を繰り返している。
しかし、2020年にアルカイダのナンバー2であったアブ・ムハンマド・アル・マスリが、テヘランの路上でイスラエルの工作員とされる人物らによって暗殺された事件は、同組織の幹部がイランの首都で平穏に生活していた実態を世界に露呈させることとなった。
マスリは娘と共に、偽名を使って高級住宅街に住んでいたとされる。このような高官が当局の関知なしに長期間滞在することは、イランのような高度な監視国家においては極めて不自然であり、国家による組織的な容認があったと見るのが妥当であろう。