高学歴の女性で専業主婦率が高い理由について、上記の有識者は「高収入の男性と出会いやすく、結果として『夫の収入だけで生活できる』からと仕事を辞めてしまう傾向があるため」と説明している。それはどの国も同じはずだが、日本では特に顕著なのだろう。

家計収入の「夫依存」は、データではっきりと可視化できる。<図2>は40代夫婦(子あり)の年収組み合わせのグラフだが、大半の世帯で年収は「夫>妻」となっている(斜線より下)。数で最も多いのは「夫1000万以上、妻無業」の世帯で、多くは「一馬力」の高学歴夫婦だろう。冒頭の相談者の娘夫婦も、このグループに含まれると思われる。

全体的に見た場合のボリュームゾーンは、「夫400~500万円台、妻200万円未満」だ。「夫正社員、妻パート」という典型タイプで、妻は就労調整することに気を配っている。夫婦の収入が対等(斜線上)、夫より妻の収入が上(斜線より上)という世帯はわずかしかない。20~30代の子持ち夫婦のグラフも、似たような模様になる。

男は仕事、女は家事・育児。日本の「夫婦ジェンダー意識」がはっきりと出ているが、好き好んでこういう選択をしている夫婦ばかりではない。女性は結婚・出産というイベントを経るとキャリアの断絶、そこからの離脱を強いられる。夫の転勤に振り回され、キャリアや人間関係を繰り返しリセットされる「転妻」の問題もクローズアップされて久しい。冒頭の相談者の娘が「専業主婦になる」と言い出した理由は、夫が転勤族だからとのことだ。

日本社会はジェンダー分業で築かれてきたが

諸外国では、既婚女性のフルタイム就業率は日本より高く、夫と対等以上の収入を得ている妻も少なくない。25~54歳の既婚女性のうち「夫と対等以上の稼ぎがある」と答えた人の割合は、日本は5.6%だが、アメリカは34.8%、フランスは40.4%、スイスに至っては51.9%と半数を超える(「ISSP 2012 - Family and Changing Gender Roles IV」)。母親が就業を継続するための条件が整っている。これらの国のデータで<図2>と同じグラフを作った場合、斜線より上の夫婦も多くなるはずだ。

「夫は仕事、妻は家事・育児。こういう役割分担を合意で決めたのなら、それでいいではないか」という意見もあるだろうが、妻からすれば夫に人生を預けるようなもので、結婚には慎重にならざるを得ない。具体的には、高い収入を求めざるを得なくなる。だが今時、そういう男性は滅多におらず、たとえば鹿児島県の25~34歳未婚男性の年収中央値は261万円で、300万円の年収がある男性に出会えたら「御の字」だ(総務省『就業構造基本調査』2022年)。二馬力でないと明るい展望は持ちにくい。

日本社会は性役割分業で築かれてきた経緯があるが、それが時代にそぐわなくなっていることを未婚化・少子化の進行から読み取るべきだ。

<資料>
OECD「PISA 2012」
総務省「就業構造基本調査」(2022年)
読売新聞オンライン「高学歴娘が専業主婦に…親の割り切れない思いに反響続々」

【グラフ】15歳生徒の母親の専業主婦率(OECD加盟38カ国)
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