<バリ島、ロンボク島などで火山活動や地震が相次ぐインドネシアでまた大地震が発生した──>

インドネシア・スラウェシ島中スラウェシ州で9月28日午後6時2分ごろ(日本時間同日午後7時2分ごろ)マグニチュード7.4の大きな地震が発生、地震に伴う津波も沿岸部に押し寄せた。

 

インドネシア国家災害庁(BNPB)は9月29日午後3時までに判明した数字として死者384人、行方不明者29人、負傷者540人であることを明らかにした。

 

津波被害のあった中スラウェシ州の州都パルやドンガラ県ドンガラ市の海岸沿いには犠牲者の遺体が散乱している、として今後犠牲者はさらに増える可能性があるとした。

 

29日の夜明けとともに現地の被害状況が次々と明らかになり、ドローンで上空からの被害状況を伝えた民放「メトロテレビ」の映像によると、家屋の大半が倒壊あるいは津波で流された海岸沿いなどで道路や橋も大きな被害を受けており、被災地に陸路で到達することが困難な状況がみてとれた。

倒壊した家屋や流された建物周辺には白い布や青いビニールをかぶせた犠牲者とみられる遺体が数多く、収容されずに放置されてた。

インドネシア政府は29日早朝から国軍、国家警察、国家捜索救助庁などの部隊を現地に派遣しているが、被災地のパル空港の滑走路が地震で被害を受けているため、南スラウェシ州のマカッサル空港あるいは北スラウェシ州のゴロンタロ空港まで進出し、そこから陸路あるいはパル空港で唯一離発着が可能なヘリコプターに乗り換えて現地入りを目指しているという。

地震はカリマンタン島でも観測

インドネシアの気象気候地球物理学庁(BMKG=日本の気象庁に相当)によると、地震の震源地は中スラウェシ州のドンガラ市の北東約27kmで震源の深さは約11Kmと推定されている。地震は南スラウェシ州の州都マカッサルやマカッサル海峡を隔てた西のカリマンタン島の東カリマンタン州サマリンダでも観測され、建物などから慌てて逃げだす市民の様子が伝えられた。

地震発生直後にBMKGは津波警報を発令したとしているが、1時間以内にこの警報は解除されている。実際に津波が来た時刻と津波警報が解除された時間の関連は現段階では明らかになっていない。また地震発生を伝える一部報道では「津波の心配はない」とのBMKGの情報を伝えるなど錯綜している。

 

地震発生直後から被害の大きかった州都パルや海岸沿いのドンガラ市では市民が地震発生直後から携帯電話などで撮影した建物から避難する人々や道路に座りこむ通行人などの様子、さらに津波が押し寄せる様子が次々とインターネットのツイッターやフェイスブックにアップされた。

 

29日午後11時前から始まったBNPBの記者会見ではこれまでに入った死傷者の数字が新たに発表されたが、担当者は「あくまでこれは地震による死傷者で津波の被害者は含まれていない。海岸沿いに遺体が多数あるとの報告を受けている」と悲壮な表情で明らかにした。

今後救援部隊が現地入りして、アクセスが困難な海岸地域で活動を開始すれば死傷者の概要が判明すると思われるが、時間を要するとともに相当数の犠牲者が予想されている。

津波が押し寄せるようすを伝える現地メディア KOMPASTV / YouTube
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病院に運び込まれた生存者は屋外で緊急治療を受けている。 Antara Foto Agency - REUTERRS

29日から捜索、救援本格化へ

ジョコ・ウィドド大統領は28日夜、警察、国軍、国家災害管理局(BNPB)などの政府関係機関に対し「全力で救援、救出活動に取り組むように」と指示をだした。

29日夜明けとともに現地からの様子を伝える民放テレビのニュース番組はいずれも「臨時ニュース」として地震、津波の様子を伝えるとともに、現地関係者との電話インタビューで現地の様子を伝えた。

ドンガラやパルは大半の地域で民家や商店などの建造物が崩壊しており、停電も続いているという。負傷者は近郊のドンガラ病院、パル病院の他に陸路で約4時間のポソ市内の病院にも搬送されて手当てを受けているという。

BMKGによると地震発生後も約30回の余震が現地では続いており、市民らは家屋倒壊を恐れて大半が屋外で不安な夜を過ごした。

中スラウェシ州航空当局はパル空港を28日夜に閉鎖した。地震で滑走路に亀裂が入るなど被害が出たため、緊急用のヘリコプター以外の離発着を禁止している。

相次ぐ地震被害のインドネシア

インドネシアは7月29日にバリ島の東に隣接するロンボク島でマグニチュード6.4の地震があり、その後8月5日、19日とマグニチュード7規模の余震が続き、津波は発生しなかったものの多数の家屋が倒壊、これまでに550人以上が犠牲となり、約7700人が負傷、約35万人が避難所やテント暮らしを余儀なくされている。

バリ島に次ぐ国際的な観光地であるロンボク島の地震被災だけに観光産業への影響を懸念するジョコ・ウィドド政権はロンボク地震を「国家災害」に指定することを見送り、被災地に国際的な支援団体や救援隊が入ることができない状態が続いている。

今回の中スラウェシ州の地震、津波被害がどこまで拡大するか現段階では不明だが、インドネシア政府としては迅速な対応とともに国際社会の支援や協力を受けることを躊躇することなく、被災者最優先の対応が求められている。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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