誇るべき自国のブランドへと昇華させたい
「ラー・チャー」の代表を務めるチャン・ティ・ングェット・ンガーさんは、「ベトナムの若者にとって、お茶を古い世代の飲み物ではなく、誇るべき自国のブランドへと昇華させたい」と意欲を語る。
「使用するお茶は全て地元産です。少数民族にもできるだけ還元できればと考えています」
店内のインテリアにも、少数民族のカラフルなタペストリーが印象的にディスプレイされている。1杯が3万5000〜6万ベトナムドン(約200〜350円)という価格帯で、古くからあるローカルな個人オーナー店とスターバックスに代表される外資プレミアムの中間を狙ったチェーン店のひとつといった位置付けだ。
「ベトナム人にとって、このカフェ業態は『ハレの場』であり、デートスポットのような価値観があります。あくまで毎日飲むのはローカルの個人店、友達・恋人・家族と一緒に楽しむのがこの業態です」(松尾さん)
経済成長の勢いも追い風に、さらなる国内拡大はもちろん、将来的な海外展開も視野に入れている。

こうした、古木茶の「進化」は飲むだけにとどまらない。
シャン・トゥエット茶に含まれる豊富なポリフェノールやミネラルに着目し、その抗酸化作用を活かした化粧品や美容分野への応用も始まっている。
前述のファム・ティ・ミン・ハイさんの会社では、古木から抽出されたエキスを配合したフェイスパックやスキンケア製品も手がけている。自然派志向の強い層から支持を集めており、伝統産品に「美容」という新たな付加価値が加わった形だ。
成長著しいベトナムで、かつては国境を越える商人に買い叩かれていた「森の遺産」が今、アイデンティティを象徴する高付加価値なブランドへと、鮮やかな変貌を遂げようとしている。
「知られざる」の汚名返上へ――。飛躍と発展を、山は静かに見守っている。

●取材協力:日越食文化協会(JVGA)、ベトジェット
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