かつて心理学を学んだイゴールは、傷痍軍人向けの支援をしているリハビリ施設「TYTANOVI(タイタノヴィ)」で心理カウンセラーとしての職を得た。キーウ市内にある施設のフィットネスジムで、専属トレーナーと共にリハビリを続けている。

近接するアートセンターにはギターやドラム、DJミキサーがあり、気軽に音楽を楽しめるほか、絵画やアロマセラピーの講座も受講できる。戦争の長期化で負傷し、障害を負う兵士が激増していることもあり、ウクライナの各都市にはこのようなリハビリ施設が増えている。

イゴールは心理学の知識を生かし、戦争で心に傷を負った、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む兵士向けにカウンセリングに当たっている。

「あなた自身も障害に苦しんでいるのに、なぜカウンセラーに?」と聞くと、「困った人を助けたいからですよ!」と、優しい表情で答えた。その言葉が私の胸に突き刺さる。

ウクライナ戦争は5年目に入った。今年2月の時点でウクライナ軍の戦死者・負傷者は50万人を超え、その数はさらに増加が見込まれる。

今回の取材で出会ったウクライナ兵士の多くは、今年も戦争は続くだろうと語っていた。戦場ではドローンやAI(人工知能)技術が発達している。しかし戦場で重傷を負い、障害を抱えた兵士たちのリハビリや精神的なケアは、最終的には人間にしか担えない。

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