ハーバード大ケネディスクールのモサバー・ラマーニ・センター・フォー・ビジネス・アンド・ガバメント研究員のリチャード・ヤロー氏は、企業収益を圧迫する国内需要の低迷、関税、高水準の債務、産業の慢性的な過剰生産能力に起因する価格競争を受けて企業は拠出義務の順守に苦慮していると指摘。「競合他社が社会保険料の支払いを回避しているなら、なおさら順守しない理由がある」と語った。

ある産業用バルブメーカーの経営者は、当局から順守するよう圧力を受ける事態にはならないと予想する。なぜならば、その場合には自社のような工場を「つぶす」ことになるからだと指摘した。

べつの家具工場の経営者は法定基準を下回るものの、⁠以前より高い保険料を支払っているとして「当社の負担は既にかなり重い」と打ち明けた。

EIUのマロ氏は、企業の利益率が低いことから当局は「企業が手抜きをすることをある程度黙認してきた」とし、「これは当局が直面する難しい選択を反映している」との見方を示した。

中国は広過ぎる

多くの労働者は、社会保険料を支払うのには収入が少なすぎると実感している。中国南部の深圳の発光ダイオード(LED)画面工場で働くダニエル・チャンさん(27)は月収5000元で10時間の勤務シフトをこなし、夜には食品配達で月3000元を稼いでいる。チャンさんは「今は非常に疲れていると感じ、ひどい状態だ」と嘆き、「(社会保険料に)毎月300―500元を支払うのは大きな負担だ」と打ち明ける。

違法状態のリスク認識しながらも「可能性の問題」