
だがウィンスレットは安っぽい感傷に流れないよう、疎遠になっていた家族のそれぞれの思いを絶妙なさじ加減で描いていく。センスのよい演出とアンダースの脚本、キャスト陣の達者な演技のおかげで、終盤には切なくも心温まるカタルシスが待ち受けている。
女優としてのウィンスレットは早くから演技力を認められていたが、バッシングの嵐にさらされる苦い経験もした。特に『タイタニック』の大ヒット後には太りすぎだとたたかれた。「人目にさらされ傷つけられる怖さを思い知らされた」と、彼女は話す。
タブロイド紙の記事や授賞式シーズンのコメンテーターの発言ばかりか、女性誌の紹介記事にまで体形をけなす辛辣な言葉が並ぶようになった。
「あれほどひどい体形バッシングは絶対に許されない。ただの悪ふざけじゃない。今なら訴訟沙汰になるレベルよ」
やや強い調子で言うと、一息ついて表情を緩め、こう付け加えた。「あの騒ぎを耐え抜いたことを、私は誇りに思う。そして50年生きてきて、いま初めて映画の演出をする機会を与えられ、とてもとても感謝しているわ」
女優は50代に入ると仕事が減るのがハリウッドの常識だ。けれどもウィンスレットは新しいスキルを磨き、撮影現場でこれまで以上に大きな主導権を握ろうとしている。
プロデュースを手がけ始めたのは20年代に入ってから。21年のテレビシリーズ『メア・オブ・イーストタウン』が最初だった。高く評価されたこのミニシリーズで、ウィンスレットは製作総指揮に加え、タイトルロールも演じた。