そのため、昨年末に訪中した自民党の二階幹事長は中国の楊潔チ国務委員(外交担当)と会談し、「中国は必ず北朝鮮に核開発を諦めるように働きかけてくれると、日本国民は信じている」と述べたそうだ。つまり「圧力強化に協力するように」ということである。それに対して楊潔チ氏は、あくまでも「対話と交渉で、平和的な解決を実現したい」と述べるに留めたとのこと。

このとき中国共産党対外聯絡部はすでに、北朝鮮と緊密に連携しながら「平昌冬季五輪に参加し、南北対話を推進して、米韓合同軍事演習をくい止めよ」という指示を出していたはずだ。もし北朝鮮が言うことを聞かなければ、中国は3枚のカードを切る準備があるという恫喝も忘れていなかっただろう。

3枚のカードとは、何度も書いてきたが、たとえば昨年11月20日のコラム「北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側」にあるように、以下の3枚だ。

 カード1:中朝軍事同盟の破棄

 カード2:断油(原油輸出の完全停止。北への「油」の90%は原油)

 カード3:中朝国境線の完全封鎖

中国はこの3枚のカードをちらつかせながら、北朝鮮にとって最も賢明な道は何かを金正恩に迫ってきた。カードは切ってしまえば効力を失う。だから中国はこの日のために、カードを使わずにおいたのである。

それも知らずに、「中国に更なる圧力をかけさせるために、日中友好を重んじて習近平訪日を実現させる」としている安倍内閣の方針は、北朝鮮を取り巻く情勢分析において、必ずしも適切ではないのではないだろうか。

日米が圧力を強化したためと解釈する非現実性

ましていわんや、今回の北朝鮮の方針転換を「日米が圧力を強めたため」と解釈するのは、あまりに非現実的である。中国の周到でしたたかな戦略を見誤ると、日本は又しても中国にやられてしまうことになろう。

なお、5日のCCTVは「平昌五輪期間中、米韓合同軍事演習が行われないことに関する特集番組」を組んだが、今回もまた「日本の憲法改正」に関する特集との抱き合わせで報道した。「安倍首相が又もや北朝鮮危機を持ち出して、それを口実に憲法改正を行なおうとしている」という番組だった。

中国として阻止したいのは「米韓合同軍事演習」であるとともに、(中国が言うところの)「日本の軍国化」である。そのためなら何でもする。それが今回の結果に表れていることから眼を逸らさない方がいいだろう。

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[執筆者]遠藤 誉 1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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