停滞する課題

EUが加盟国の防衛協力強化のために打ち出した「常設軍事協力枠組み(PESCO)」の整備作業も、ドイツの政治空白の犠牲になる恐れがある。独仏両国は12月のEU定例首脳会議でPESCOの法制化のための署名にこぎ着けたいと考えていたが、外交筋の話ではもはやそれは高望みし過ぎる目標になった。

またドイツは2015年の欧州難民危機を踏まえ、EUの移民政策改革で中心的な役割を果たしてきた。現在でもイタリア、ギリシャなどとポーランド、ハンガリーの間で意見対立によって事態が紛糾している中で、ドイツが実質的な政権不在となれば、局面打開はほとんど期待できない。

欧州が抱える差し迫った問題のうち、恐らくドイツの政治空白で重大な影響を唯一受けないとみられるのはブレグジット(英のEU離脱)だろう。ドイツの主要政党間に幅広い政治的な合意が確立しているためだ。

つまり正式な政権発足まで暫定首相を務めることになるメルケル氏は、欧州委員会とバルニエ首席交渉官が主導する対英交渉において影響力を行使できる余地が十分にある。

メルケル氏の選択肢

欧州改革に関しては、ドイツでかろうじて3党連立政権が樹立されたとしても、メルケル氏がマクロン氏に対してどれだけ歩み寄れるか疑問が高まっていた。

その連立協議が決裂したことから、メルケル氏には今後3つの選択肢があるように見える。1つは社会民主党(SDP)を説得して再び大連立を組むこと、2つ目は緑の党もしくは自由民主党のどちらかと少数政権を立ち上げること、最後は再選挙に打って出ることだ。

今のところSPD指導部は、野党の立場を貫くという約束を撤回する気配は示していない。さらにメルケル氏は20日に少数政権を率いる可能性を排除しており、情勢が変化しなければ再選挙しか残された道はないかもしれない。

再選挙は来年3月ないし4月以降となる見通し。ただ足元の世論調査からすると、再選挙後もメルケル氏の連立に向けた選択肢が増えるわけではなさそうだ。実際に有権者が今回の連立協議失敗の責任がメルケル氏の保守与党にあるとみなせば、同氏の政治的立場はさらに弱まりかねない。そうなるとドイツの政治的な安定やマクロン氏が掲げる欧州改革の野望は、一段の逆風にさらされる。

(Noah Barkin記者)

[ベルリン 21日 ロイター]
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