トランプ自身はゲノンや伝統主義のことを知らないだろうが、彼は直感的にその世界観に共鳴する。それを利用することによって、アメリカの有権者の約40%を占める支持者を刺激し、共感を呼ぶ。

悲嘆は理性より熱く燃える。伝統主義的な極右の見解は、苦痛を抱えて恐れる人々を動かす。その力は、民主主義や文化的寛容さが教育のあるまともな人々を動かす力よりも、はるかに大きい。これがトランプに大統領の座をもたらした。

バーで聞いた極右政治家の耳障りな声と反民主主義的な見解は、昔のことでも遠い国のことでもない。彼の声は今、トランプを通して聞こえてくる。その中身は、ゲノンやファシストが考える「社会のあるべき姿」をバノン流にアレンジした見解だ。

それは敵としての「他者」と救世主としての指導者が存在し、民主的なはずの政治機関が国民を抑圧する「闇の国家」とも呼ぶべきアメリカだ。

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<本誌 8月8日発売最新号(2017年8月15日&22日号)掲載>

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