私がここで言いたいのは、投資銀行家がどうこうという話ではなく、ファイナンスだけわかっていても、事業家として大成しないということです。事業家として成功するには、ファイナンスを用いて事業の本質を見極め、新たな利益を創造していく能力が必要なのです。そして、そのような能力は、数式だけエクセルで追いかけていても身につくものではありません。ビジネスの当事者となり、ファイナンス×事業の「本気のぶつかり稽古」を行って初めて身につけることができるものなのです。

 ここで3つ目の大きな勘違いについてまとめておきましょう。

「ファイナンスは、それだけわかったからといってお金を生み出せるような錬金術ではない」

 ファイナンスを勉強したからといって、お金持ちになれるわけではありません。ファイナンスはお金に対する考え方を教えてくれるものであり、お金儲けが上手になるためのツールではないのです。

 むしろ、世の中に錬金術などというものは存在せず、お金というものにロジカルにきちんと向き合っていけるようになることがファイナンスを学ぶ意義なのです。そして、その考え方を事業に活かしてはじめて、ファイナンスを学んだ意義が出てくるのです。もちろん、お金を稼ぐ、あるいは事業を行って利益を出すにはファイナンスの知識は必ず必要になってきます。

 先述のソフトバンクアカデミアの話に戻りますが、社長室在籍で、実際にアカデミアのランキングで首位にいた方は「ファンドマネージャーの資質がない人は、ソフトバンクの後継者には100%なれない」と断言しています。

 M&Aなどの大きなディールで莫大な利益を出そうと思えば、ファイナンスの知識なしに実現することは不可能です。

 ただ、ファイナンスは優秀な事業家になるきっかけにはなり得ますが、ファイナンスを習得するだけでその域に到達することはできません。

 またもやウォーレン・バフェット氏の言葉になりますが、「事業家であるがゆえにより良い投資を行うことができ、投資家であるがゆえによりよい事業を行うことができる」のです。

 ファイナンスと事業、両方そろってはじめて意味を成すのです。

今から始めるのなら「プログラミング」より「ファイナンス」

 ここまで本書を読み進めてみて、みなさんはどのような感想をお持ちでしょうか。

 今まで思っていたことと今聞いたファイナンスはまったく違うな、と感じているかもしれません。

 特殊スキルだと思っていたファイナンスが、実はただの教養である。ややこしいと思っていたものが実は単純なものである。ファイナンスを理解したからといって、それだけでは良い事業家になるには不十分だ。

 これまでのイメージと大きく異なることに驚きを隠せない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私が今述べてきたことは、紛れもない事実なのです。

ファイナンスを学ぶ意義