寿命の性差を説明できるかもしれない「異型配偶子性仮説」とは?

この性差を説明する遺伝的な仮説の1つとして研究が指摘するのが、性染色体の違いに注目した「異型配偶子性仮説」だ。哺乳類の場合、メスがX染色体を2本持つのに対し、オスはXとYの1本ずつしか持たない。

ある別の研究によると、X染色体が2本あることで、メスは有害な突然変異から守られやすくなり、生存する上でのアドバンテージになる可能性があるという。ただ興味深いことに、この染色体の構成は鳥類では逆で、メスが異なる染色体を持つ。

今回の国際研究の筆頭著者であるヨハンナ・スタークは、「予想とは逆の傾向を示す種も存在する」と、例外の存在を指摘する。

「例えば、多くの猛禽類では、メスの方が大型で、オスよりも長命だ。性染色体だけが原因とは言えない」

繁殖戦略もまた重要な要素だ。

スタークらの研究によると、競争が激しい一夫多妻制の哺乳類の場合、オスがメスよりも早く死ぬ傾向がある。一方、通常は一夫一妻制である鳥類の場合、競争圧力が小さく、オスが長生きすることが多い。

子育ての役割分担も影響する。自然界で子育てに多くを費やす性(哺乳類では多くの場合メス)は、より長生きする傾向がある。メスは自分の子どもが自立するか、性的に成熟するまで生き残る必要があるため、霊長類のような長寿の種においては、長生きなメスが進化のなかで有利になるというわけだ。

また、研究者たちは環境が及ぼす影響を評価するため、動物園の動物も調査した。しかし、動物園の動物は捕食者や過酷な環境から守られているにもかかわらず、性差による寿命の差縮まっているものの、依然として存在するという結果となった。

寿命の性差を生む「決定打」は何なのか。今後の研究の進展が待たれる。

【参考文献】

Staerk, J., Conde, D. A., Tidière, M., Lemaître, J.-F., Liker, A., Vági, B., Pavard, S., Giraudeau, M., Smeele, S. Q., Vincze, O., Ronget, V., da Silva, R., Pereboom, Z., Bertelsen, M. F., Gaillard, J.-M., Székely, T., & Colchero, F. (2025). Sexual selection drives sex difference in adult life expectancy across mammals and birds. Science Advances, 11(40).

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