加害者家族が連帯責任を強いられる傾向がある日本


「夫が性犯罪なんて......うちなら即離婚!」と思うかもしれません。しかし、性加害者の妻には「別れない」、つまり婚姻関係を継続するという選択をする方も少なくありません。(71ページより)

その理由としては、①経済的理由、②子どもの存在、③共依存関係、という3点が挙げられるそうだ。また、世間からの強い非難にさらされることも大きな影響を与えるのだろう。

前述のように、欧米では加害者家族は支援を必要とする存在として理解されているようだが、日本では「世間体」という独特の概念に強く縛られることがある。そのため、加害当事者とその家族が連帯責任を強いられる傾向が根強く残っているようだ。

「親の育て方が悪かったから」という子育て自己責任論や、「妻が夫の性欲をケアしていなかったから」といった性欲原因論をベースとした価値観もまた、加害者家族を二重三重に苦しめる。


 この状況を改善するためには、加害者家族も「支援を必要とする存在」であるという認識を社会全体で共有していく必要があります。(85ページより)

人間はとかく感情的になりがちだ。加害者家族の思いを忘れがちでもあるだろう。だが著者が指摘しているように、これは社会全体の問題として受け止めるべき問題なのかもしれない。

夫が痴漢で逮捕されました――性犯罪と「加害者家族」

夫が痴漢で逮捕されました――性犯罪と「加害者家族」
 斉藤章佳・著
 朝日新書

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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

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