さらに懸念すべきは、被害者が労働搾取を受けても声を上げづらく、孤立しがちだということだ。高橋がSNSで未払いの状況を発信したところ、「不注意なあなたが悪い」「なぜすぐに辞めなかったのか」といった自己責任を問うコメントが寄せられた。

「悪徳ファームに気を付けて」と日本語で注意喚起する投稿の多くが匿名であるのは、そのリスクの高さを物語っており、問題が顕在化しにくくなっている。

伊勢は言う。「違法な農場の労働環境が整備されれば、今のように大量の労働者を抱える形ではなくなると思うので、英語力や職業経験のない若い日本人は、新たなビザ取得の機会を見つけるのがより難しくなります。でも、オーストラリアまで来て、奴隷のように搾取される時間はもったいないので、やはり改善されることを望みます」

今年5月のオーストラリアの連邦総選挙では、労働者の権利強化を掲げた労働党が再び政権を獲得した。国際的な労働力に依存し続ける以上、オーストラリアが道義的・経済的責任を果たすべきだという批判があるのは当然だろう。

高橋の元職場で未払い被害に遭った従業員は、「オーストラリア政府が動かない理由は、悪徳ファームの問題が公になり国際問題になれば誰もそこで働かなくなり、経済が悪化するからではないか」と、政府が現状を黙認している可能性を示唆した。

ただ、こうした搾取の構造が温存される背景には、ワーホリビザの更新に主に1次産業での就労を必須としているオーストラリア政府と、どうしてもビザを更新したい日本人といういびつな互恵関係に加え、日本人を違法な職場に誘うクチコミ、被害を訴えづらい状況ゆえ問題が可視化されてこなかった現実がある。

在オーストラリア日本大使館の回答は・・・
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