喜三二が活躍した黄表紙の世界
子供向けの絵入り本であった草双紙は、次第に恋愛や遊郭、滑稽などを主題とした大人向けのものへと変わっていき、表紙の色から赤本や青本、黒本と呼ばれるようになった(詳しくは:大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! 江戸の出版の仕組みと書物の人気ジャンル)。
恋川春町が鱗形屋から刊行した『金々先生栄花夢』を皮切りに、表紙の色から「黄表紙」と呼ばれる草双紙が人気を博した。
黄表紙は毎年、新春に新版を刊行する慣わしとなっており、新年の縁起物という意味合いも強かった。
安永末から天明4年前後にかけて、黄表紙の刊行点数は爆発的に増えていく。ここでも、鱗形屋の衰退により、取って代わって黄表紙の市場に参入したのが蔦重であった。鱗形屋で活躍した朋誠堂喜三二や恋川春町らを起用し、多くの作品を世に送り出した。

黄表紙の元祖となる本作は、江戸に出てきた金村屋金兵衛の遊興の有様を、従来の赤本や黒本のように幼童向けではなく、より大人向けの知的な描写で描いたもの。
出典: 国書データベース、https://doi.org/10.20730/200015145

安永9年には、凋落しつつある鱗形屋に取って代わるようにして、蔦重は一挙に15種もの出版物を刊行した。本作は同年に出され、蔦重が初めて手がけた黄表紙のひとつ。鱗形屋で活躍した朋誠堂喜三二が戯作を、北尾重政の弟子で、山東京伝の名で戯作者としても活躍する北尾政演(まさのぶ)が挿絵を担当している。

『曽我物語』の世界に『忠臣蔵』など別の物語を混ぜ合わせた黄表紙。最後の場面には、作者の喜三二が登場して、本作品を版元の蔦重に渡しているところが描かれる。

画工の署名はないが、北尾重政に結び付けられる黄表紙。朋誠堂喜三二と北尾重政は、蔦屋重三郎の版元から刊行された初期黄表紙作品を支えた人物である。巻頭に喜三二と蔦重が登場して、新版目録を紹介する。
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