サプライチェーンも同じくらい驚異的だ。TSMCは業界最高水準の製品の主要な供給源かもしれないが、そのTSMCも、半導体の製造に用いる最先端のレーザー1基だけで45万7329個の部品を必要とするエコシステムに依存している。

中国は膨大な研究開発資金をつぎ込んでいるが、台湾に10年以上、後れを取っている。蜃気楼を永遠に追いかけているかのように、目標は永遠に遠ざかっていく。

一方で、中国が自分たちの領土と見なしている土地にこれほど価値が高くて重要な技術が存在するという事実を考えたとき、「TSMCの地位は、中国に台湾を欲しいとよりいっそう思わせる」と、台湾のシンクタンク、中央研究院の政治学者である呉介民(ウー・チエミン)は述べている。

台湾当局は「シリコンシールド(半導体の盾)」が自分たちを守っていると主張するが、台湾の安全と安全保障が絶対的に保証されると考えるのは無謀だ。

中国が台湾を攻撃すれば、中国だけでなく他の国々の供給源も破壊することになる。そこに勝者はいないが、少なくとも中国にとって、自分たちのライバルを利することはない。

TSMCの存在は、既に複雑な状況をさらに複雑にする。外国政府や国際機関のシナリオプランニングは、中国と台湾が衝突した際の軍事的および地政学的影響だけでなく、この極めて重要な部品の供給が途絶えるだけで世界経済に甚大な被害をもたらすという、絶対的な確実性も考慮しなければならない。

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半導体をめぐる現状が台湾の安全保障をどこまで保証するかという点は見解が分かれる。半導体に関しては、今の台湾は中国にとってなくてはならない存在だという見方もある。
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