故ナスララは「イスラエルは一線を超えた」と何度も非難しつつ、軍事施設を中心に攻撃するなど慎重な姿勢を見せてきた。

ヒズボラはレバノン国内では政党でもある。経済が危機的状況にあるなかで、イスラエルによる攻撃でインフラなどが破壊されれば、その負担は市民生活に重くのしかかり、そのため政治組織として市民の反発を招きかねないからだ。

イスラエル国内ではヒズボラからの攻撃によって避難を余儀なくされた北部住民約6万人の帰還が最重要課題となっており、国民の半数以上がヒズボラへの攻撃を後押ししている。

国内世論を背に、ヒズボラの足元を見たイスラエルは「伸びた草(=軍事力)」を刈り取る「草刈り」に乗り出した。ヒズボラの幹部は軒並み殺害され、ついにはガザでの停戦がなくてもイスラエルとの外交解決を望むという声明さえ出すに至る。

イスラエルは今回、ヒズボラに大きな打撃を与えることには成功するだろう。しかし、ガザ停戦を後回しにした代償として人質解放はさらに遠のき、市民の信頼は損なわれている。

また、ハマス同様にヒズボラを殲滅させることはできない。これまでもハマスに対して「草刈り」が定期的に行われてきたが結局、「草」はいずれ伸びる。

「軍事力でイデオロギーを倒すことはできない。政治的な解決を示すしかない」とイスラエルの情報機関シンベトの元長官アミ・アヤロンが訴えるように、その証左こそが「10月7日」であった。

「自分たちは誰の助けがなくても、国を守る」という思想
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