人間不信となった青葉はコンビニ退職後に単発の派遣労働を経験するが長続きせず、27歳の頃に無職に。青葉は「就職氷河期世代」に当てはまっていた。音楽の世界で生きていく夢を諦め、貧困のどん底に沈み自暴自棄な行動に出る。見ず知らずの女性宅に忍び込み、暴行の容疑で逮捕された。

電気が止められアダルトサイトを閲覧できなくなり「性欲に困った」末の犯行だった。「お金がない。友達もいない。人生どうでもいい。生きていても意味がない」と逮捕後の取り調べでこぼしたという。

そんななか京アニの『涼宮ハルヒの憂鬱』に出会い、衝撃を受ける。自分でも作品を書けるかもしれないと生きる支えができた。「小説に全力を込めれば、暮らしていけるのではないか」(第4回公判)。

しかしコンビニ強盗で実刑を科され、収容先の刑務所で精神疾患と診断される。小説は評価されず、次第に京アニに「パクられた」と思うようになる。「底辺」を自称し、力でねじ伏せて黙らせるという論理を持つ人に対し、どうすればよかったのか? 事件を防ぐ手だてはなかったのか?

京都新聞はそこにも重きを置く。実は凶行直前、精神疾患の症状が一進一退するなか、青葉は福祉とつながりを絶っていたという。福祉関係者は「『トラブルメーカー』として地域社会から排除される。それが症状の悪化につながり、さらなる問題行動を起こしてしまう」と悔しがる。

同様の症状で周囲の力を得て更生の道を歩む男性のケースも紹介されていた。青葉は「人とのつながりが完全になくなったとき、犯罪行為に走る」と法廷で言葉を残している。

悲しみをなくすのは簡単ではないが、答えへの「道筋」を示し、事件と向き合い続けるのが「地元紙の使命」だと京都新聞は結んでいる。受け止める社会の側も同じではないか。犯人の論理を追うのが苦手でも、知らなくてはいけないことはある。

※イラストは編集部の新しい試みとして画像生成AI 「DALL-E3」で作成されています。

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