「離脱」や「発言」は企業や国家が自身の衰退に気付くための貴重なシグナルであり、それらを軽視したり無視したりすれば、回復の芽は消える。
特に国家の場合は、企業などほかの集まりよりも「離脱」することが難しく、だからこそ一層「発言」の価値を高く見積もるべきだ。デモクラシーが大事なゆえんである。
「この国に絶望的だったら出て行きゃいい」という言葉は、衰退の兆候を直視せず、回復のチャンスを見逃す姿勢の象徴のように思える。
そこには「日本で何とか希望を見つけてがんばれ」という叱咤激励の意味が込められていたのかもしれない。だが、ハーシュマンの考えをなぞるなら、顧客や職員や市民によって絶望や不満がそれとして「発言」されること自体にこそ価値を見いだすべきだ。
そうできる態度の不在こそが、あらゆる組織や社会が衰退していく過程の本質的な一部なのだから。
<1月24日号掲載>