<ミュンヘン五輪の「黒い九月」事件を題材にした『ミュンヘン』は、イスラエルから「パレスチナ寄りだ」と批判されているが......>

1972年開催のミュンヘン・オリンピックは、パレスチナの過激派組織「黒い九月」が選手村を襲撃してイスラエルの選手たち11人を殺害したことで歴史に残された。

映画『ミュンヘン』の冒頭で事件そのものは描写されるが(そもそもの目的は殺害ではなく拘束して人質にすることだった)、メインストーリーは事件後にイスラエル政府から指令を受けた諜報機関モサドの暗殺チームによる報復の過程だ。

チームに選抜された5人は、表向きはモサドと関係を断ち(つまりイスラエル政府は責任を取らない)、欧州各国に潜伏した11人の「黒い九月」のメンバーを1人ずつ殺害する。

しかし、リーダーを任されたアブナー(エリック・バナ)を含め、5人は暗殺についてはほぼ素人だった。人を殺した経験はない。暗殺を続けながら、5人の心は徐々に壊れていく。

原作は暗殺チームの元メンバーの告白を基にしたノンフィクションだ。でも史実では、数十人規模のモサド工作員がユニットを組んで、世界各地で黒い九月メンバーを殺害している。映画化に当たり監督のスティーブン・スピルバーグと脚本チームが、大幅に史実を変えたことは間違いないだろう。

2005年に公開されたこの映画を観たとき、僕はパレスチナ問題の深刻さを十分に理解してはいなかったはずだ。だから印象は薄い。

パレスチナ難民キャンプで話したこと