面会は何日も続く。でもバーディはアルの言葉にまったく反応を示さない。感情を抑えきれなくなったアルに抱き締められながら、部屋の小窓に区切られた青空をじっと見つめ続けるばかりだ。

......ここまでストーリーラインを書いたけれど、この映画を知る上で、ストーリーそのものに意味はあまりない。この映画の本質はラストだ。これほどに強烈で、意表を突いて、観客を突き放して裏切って、そしてみずみずしいラストシーンは、その前もその後も見たことがない。

この映画を僕は、年上の友人と一緒に観に行った。映画が終わって劇場内が明るくなったとき、人をバカにしているよ、と彼は言った。本気で怒っていた。でも僕は笑っていた。笑うしかない。そして感動していた。すごい映画だ。2人の青春時代は甘く切なく、戦場は殺す側も殺される側も壊され、そして翼を持たないバーディは空を見つめ続ける。人はなぜ地を這いながら憎み合うのか。人はなぜ土地を奪い合いながら殺し合うのか。

ろうで貼り合わせた翼を付けたイカロスは高く飛びすぎたために太陽の熱でろうが溶け、落下する。人は飛べないのだ。まさしくその瞬間、映画のラストは僕たちを救う。あらためて思う。大好きな映画だ。

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『バーディ』(1984年)

監督/アラン・パーカー

出演/マシュー・モディーン、ニコラス・ケイジ、ジョン・ハーキンス

<本誌2024年1月23日号掲載>



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