そのときその場にいた人たちを、山﨑とカメラは訪ね歩く。2人だけではない。この日は少なくとも9人が警察によって排除されていた。プラカードを掲げるために現場に来たが、それすら阻止された女性たちもいる。抗議に対して北海道警は7カ月沈黙してから、排除は適正だったと結論付けた。そして裁判が始まる。あとはネタバレになる。裁判に何が影響したのか。ぜひ見てほしい。

警官がこれほど露骨に人権侵害を行ったことについて元道警幹部は、「メディアの前で平然とやった。あんたたち(マスコミは)無視されたんですよ」とインタビューで山﨑に語っている。だから思い出す。

僕にとっての映画デビュー作である『A』には、オウム信者が不当に逮捕される瞬間が至近距離から記録されている。警官たちが撮影を妨害しなかった理由は、僕をテレビカメラマンと見なしたからだろう。テレビならば撮っても発表しない。つまりなめられていたのだ。メディアが権力を監視しなければ、権力は必ず暴走する。

制作はHBC。つまりテレビ局。そして山﨑はテレビディレクター。でもこの作品は政治権力に対して一切忖度しない。モザイクはほぼない。見事だ。土俵際いっぱいで炸裂したメディアの矜持がここにある。

231128P42_MCM_02.jpg『ヤジと民主主義』(12月9日公開)

©HBC/TBS

監督/山﨑裕侍

<本誌2023年11月28日号掲載>

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