でも同時に静かだ。互いの体を貪り合いながら、互いの過去の記憶をたどる。東日本大震災以降、僕たちは滅亡する自分たちを、意識の片隅で常に意識しているのかもしれない。それはエントロピーが増大してあらゆるエネルギーの動きが停止した宇宙のように、疫病が蔓延した世界のように、とても静謐なカタストロフィーだ。

僕はそう解釈した。荒井からは森君は何を言ってるのかね、と言われるかもしれないけれど。

ネットで検索したら、本作上映後のトークで、荒井がこんなことを言っていた。最後にペーストする。

「人間って、昼間もあるけれど夜もある。昼だけ描く、そういうのっておかしいな、僕はむしろダークサイドを描くことが人間を描くことだと思っています」

magmori210126_futari2.jpg『火口のふたり』(2019年)

監督/荒井晴彦

出演/柄本佑、瀧内公美

<本誌2021年1月26日号掲載>

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 ベトナム化するイラン戦争
2026年9月1日号(8月25日発売)は「ベトナム化するイラン戦争」特集。

曖昧すぎる目標、敵国の軽視、自国軍事力への過信……長期化・泥沼化したベトナム戦争との共通点

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます