そんな彼もイラク戦争の折には、難民となって欧州に逃れたと聞いている。その後の消息は不明である。
シリアには、ホムスという街の住民(ホムシーと呼ばれる)を「おバカキャラ」としてイジるジョークがある。例えばこんな小噺(こばなし)。
「あるホムシーが鶏を2羽飼っていたが、1羽が病気になってしまった。ホムシーは、そのうち1羽をさばいてスープにし、それを病気の1羽に飲ませた」
これに対し、ホムスの人々もユーモアで切り返すのが、彼らの伝統であった。
しかし、2011年からの内戦でホムスの市街地は壊滅。砂漠に咲いた花のような彼らの笑顔を思い出すと、あまりに切ない。
<2020年12月20日/2021年1月5日号掲載>
鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情