長く続くデフレの中で、値下げ圧力や過当競争により、低価格戦略を余儀なくされてきた店や会社は多いかもしれない。2017年4月には消費税率が10%に引き上げられるが、それで世の中が自動的にインフレに転じるとは限らないし、モノの値段が勝手に上がるわけでもない。
商品やサービスを売るビジネスの現場では、そう単純な話ではない。「個々の会社や店が意志を持って値段を上げ、それをお客さんに受け入れてもらうことが必要」だと、多くの中小・中堅企業を調査してきた経営コンサルタントの辻井啓作氏は言う。
これまで2回、本書から「値上げが中小企業を幸せにする四つの理由」を抜粋したが、それに続き「第2章 値下げの麻薬にはまっていませんか」から「低価格戦略の五つのリスク」の項を抜粋し、前後半に分けて掲載する。
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※値上げが中小企業を幸せにする4つの理由:前編はこちら
※値上げが中小企業を幸せにする4つの理由:後編はこちら
前章で、値上げにより粗利を確保することがいかに営業利益率を高めるか、そのことによって、店や会社の社長だけでなく、社員とパート・アルバイト、取引先、場合によってはお客さんまでが幸せになることを説明しました。
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値下げをするとその逆の効果が生じるのは、推測できると思います。しかし、実際にはそれだけでなく、一度の値下げが未来にわたって会社を蝕んでいく危険性すらあるのです。
では順に見ていきましょう。
1.粗利を損ねる
いうまでもなく、値下げは利益率を損ねます。値上げが劇的に営業利益率を高めるのと逆に、値下げは劇的に利益率を悪化させます。
もちろん値下げをしても、それによって売り上げが伸びれば、利益率はともかく、利益の額は確保できるので、一時的には業績が良くなったと感じることがあります。
伸びた売り上げがずっと続けば、それで問題はないのですが、中小規模の店や会社で値下げをした場合、たいていは数日、数週間、長くても数カ月で売り上げが元に戻り、利益率が悪化しただけの結果に終わります。場合によっては、売上数が元に戻り、値下げした分だけ売り上げが落ちたという笑えない話にもなりかねません。
どうして、こんなことが起こるのでしょうか。それは、ライバル店(ライバル会社)も競って値下げしてくるからです。
ある商品を値下げして、うまく売り上げが伸びたとすれば、それはライバル店の売り上げを奪ったからです。当然、ライバル店は売り上げを奪われ続けるわけにはいかないので、対抗して値下げをせざるを得ません。