トルコ大統領の怒りの裏にある、知られざるトルコとNZの歴史問題

2019年4月6日(土)15時10分
楊海英

その点で、テロ犯タラントが73ページにも及ぶ声明文の中で、中国の全体主義思想を称賛していたことは注目に値する。エルドアンは2月に、「ウイグル人弾圧は人類の恥」と中国によるイスラム敵視政策に注意を促したばかり。事実、タラントは中国共産党政権によるウイグル人弾圧の報道を知り、「多様性なき国家」中国に共鳴するに至ったと指摘されている。

ニュージーランドのテロを受けて、中国共産党系のプロパガンダ紙「環球時報」幹部はネット上で、「過激派のテロ行為を事前に抑え込んでいる」と、改めて新疆ウイグル自治区での強制収容を正当化している。

ニュージーランドのテロ事件は私たちに2つのメッセージを示唆している。第1に、イスラム世界に対する差別と偏見の根は深いことだ。それはともすれば、西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観とも連動している。

第2に、暴力に正当性が与えられている背景には、中国の存在が無視できないという点だ。中国の少数民族弾圧という暴力は国内にとどまらない。今回タラントが声明で称賛したように、中国の手法は各国の独裁者たちに加え、確実に個々のテロリストにも「輸入」されるようになってきたのだ。

<本誌2019年04月09日号掲載>

※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ