ワクチン接種は自由の侵害にならない、「個人の選択」ではなく強制すべき

2021年8月18日(水)18時21分
ピーター・シンガー(米プリンストン大学生命倫理学教授)

コロナ禍では、ワクチン接種の義務化がミルの説く自由の原則を侵すことはない。ワクチン未接種のオリンピック選手は他者に感染リスクを負わせる。「個人の選択」だと言ったエリソンはワクチンを接種するか、でなければ自宅にいるべきだった。IOC(国際オリンピック委員会)が、競技に参加できるのは接種した選手のみだと言っていたら、多くのアスリートを感染リスクから救っていただろう。

7月、フランスとギリシャで映画館やバー、旅行や列車利用の際にはワクチン接種証明書の提示を要求すると発表された。これは誰の自由も侵害しない。

今年2月、インドネシア政府は全ての成人にワクチン接種を義務付ける世界初の国家になったが、この時重要な問題だったのは、市民の自由を侵すことではなく、富める国がこの法律のために必要なワクチンを提供しなかったことだ。その結果、インドネシアは新型コロナの感染爆発地になり、何千人ものワクチン未接種の市民が亡くなっている。

©Project Syndicate

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