元CIA局員たちへの取材で炙り出された、日米の諜報活動の実態

2019年9月18日(水)18時20分
小暮聡子(本誌記者)

――山田さんはこれまで諜報関係者に数多く取材をしてきているが、彼らはなぜ取材に応じてくれるのか。彼らにとって、取材に応じることによる「テイク」は何か。

彼らが今やっている仕事にプラスになると考えているのではないか。CIAを辞めた後に民間企業に入る人はとても多い。コンサルタントのようなことをしていたり。

そういう人たちが、(記者である自分と)繋がっていたほうがいいと思うからしゃべってくれるパターンはあるだろう。もしくは、こういう話があると伝えると、ここまでだったら話してもいいと、自分との関係性の上で話してくれる人もいる。

だが今回の取材で一番大きかったのは、答えてくれた人たちがキヨのことを尊敬していた、ということだろう。キヨの人生がこういう形で、歴史には記録されないまま終わっていくということを、自分たちも同じ仕事をしているので知っている。

そんななかで、もうキヨは亡くなっているし、彼女がやってきたことを歴史の一部分として、完全に匿名でという条件でなら話してもいいと応じてくれた。彼女が生きたということを遺したいという私の意図に乗ってくれたのだと思う。

――CIAで働いていた日本人はキヨだけではなかったのか。

日本人がいたのかはわからない。日本語を教えていたのはキヨだけではなく、日系人はいた。キヨよりも後の世代の日系人で、取材に応じてくれなかった人もいた。

――著書の中に、CIAを養成する学校が日本にもある、というくだりがある。そこでは何人くらい養成しているのか。

CIA以外にも、いろいろな立場の人が入り混じっていて、何の組織かよくわからなくなっている。それ以上、詳しいことはここでは言えないが(笑)。ちなみに、日本国内の各国大使館に、それぞれの国の諜報職員を紛れ込ませているというのは有名な話だ。

――日本にCIAのような組織はあるのか。

しいて言えば内閣情報調査室だが、内調は基本的には国内のことをメインに扱っているだろう。日本の組織のなかで海外の諜報活動をしているところはほぼないと言っていい。

だが警察関係のなかに、海外に行って動いている人たちはいる。とは言えその人たちも、国外で集めているのは日本人に関する情報だ。そういうことも含めて考えれば、日本にはCIAと同じような組織はないと言える。

おそらくどこの国にもCIAのような、国外で自国の国益になるような情報を拾う、もしくは自国に危険が及ばないように情報を収集する組織はあるのだが、日本にはない。それだと日本を守れないので、日本版CIAを作った方がいいのでは、という話は政府関係者の中でも聞かれる。

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