台湾IT大臣オードリー・タンの真価、「マスクマップ」はわずか3日で開発された

2020年7月15日(水)11時45分
近藤弥生子(ノンフィクションライター、台北在住)

まず、台湾の行政院(内閣に相当)と立法院(国会)は分かれており、基本的に兼任はしないことが挙げられる。このため行政院内にある各省庁の大臣は皆、その分野におけるスペシャリストが就任している。

「足を引っ張り合っている場合ではない。手持ちで最も勝率が高いカードを掲げ、前へ進め」──これが、筆者のイメージする現在の台湾の民意だ。一見平和なようでも、ややもすると民主主義を失うのではという危機感が、人々の間に常に漂っているからだと思われる。

台湾は「世界デジタル競争力ランキング2019」で世界13位(日本は23位)にランクインするなど、デジタル人材の育成に力を入れている。それに呼応するように、グーグルやマイクロソフトといった名だたる企業が次々に台湾にAI研究拠点を構築。そんなデジタル界で、タンは大きな存在感を発揮している。

例えば現政権が掲げる重要国策の1つが「アジア・シリコンバレー計画」。世界での存在感を高めようというこの取り組みでAI部門を率いるのが、米マイクロソフトでAI研究開発責任者を務めた杜奕瑾(トゥ・イーチン)だ。彼が帰国し「台湾AIラボ」を設立するのにも、タンは一役買っている。

多様性が受け入れられなければ人材は居つかない。多様性を受け入れる度量があれば、人材は戻り、発展は続く。その大切なことを、台湾とタンは目の前で私たちに実証してくれているのではないだろうか。

<2020年7月21日号「台湾の力量」特集より>

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