飲食店の倒産増加は、日本経済にとって本当に「悪いニュース」か

2020年2月5日(水)12時09分
加谷珪一

政府はリーマン・ショックを受けて中小企業金融円滑化法を施行し、意図的に倒産を防いできた。これは資金繰りが厳しくなった中小企業が銀行に返済条件の変更を求めた場合、銀行は金利の減免や返済期限の見直しに応じなければならないというもので、銀行は経営が悪化した企業にも支援を続けざるを得なかった。

同法は時限立法であり、13年に効力を失っているが、その後も、金融庁は銀行に対して報告義務を課してきた。実質的に法律の拘束力が続いていたわけだが、それも19年4月に終了した。

メガバンク各行は、収益低下から前代未聞のリストラを実施している最中であり、今後は融資先への姿勢も厳しくなると予想される。人口減少による市場縮小も進むので、各業界で倒産が増える可能性は高いだろう。

当事者にとって倒産は厳しいことかもしれないが、日本は空前の人手不足となっており、人材を最適配分しないと供給力に制限がかかる。存続できない企業は倒産させ、その従業員を人手が足りない他の業界にシフトさせることは経済全体にとってよい効果をもたらす。実は、倒産の増加そのものを過度に悲観視する必要はないのだ。

<本誌2月4日号掲載>

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