アステイオン

座談会

「日本には現場力がある」...多極化する世界の中で、日本が進むべき道とは?

2025年07月02日(水)11時05分
池内 恵+廣瀬陽子+森 聡+北岡伸一(構成:石本凌也)

日本の課題

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北岡 では最後に、日本はこれからどうするかという話に入っていきたいと思います。最初に私からお話ししますと、第一に、2022年策定の安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の内容を着実に進めていくということです。

今回のウクライナ戦争の教訓は、やはり戦争は時々発生するし、自分で戦わなければ誰も助けてくれないということです。もちろん予算のことなどもありますが、全て一斉にはできないので、必要なものから順番にやっていくことが大事だと思います。

第二に日米関係の強化です。強化というのはいろいろありますが、やはりシミュレーションをたくさん行って、対応策を具体的に準備しておくことが大事だと思います。

第三は、東南アジアとの関係強化です。東南アジアにはBRICSに入りたいと言っている国が複数ある中で、しっかりつなぎ止めることが重要です。アジアとの関係をもっと組織化していく。とにかく会って、話す関係をつくるべきだと思っています。

4つ目が、グローバルサウスの国々に、もう少しアプローチすべきだということです。やはり力の支配になると困ることを伝えるのと同時に、我々は西欧諸国のように上から目線では物を言わないという、日本の姿勢を理解してもらうことも大事です。

私が今、考えているのが以上ですが、皆さんはいかがでしょうか。

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廣瀬 今、ご指摘された問題は、全て重要だと思います。特にグローバルサウスは今後の世界を考える上でとても重要で、ウクライナでの戦争の行方がどうなったとしても、グローバルサウスがロシアとの関係を緊密にする限り、ロシアの軍事力や経済力はずっと維持されることになります。

それは、再び戦争が起こる可能性を担保するものにもなってしまうのです。ですので、グローバルサウスとの関係は、日本のプレゼンスを維持するためにも、ならず者をはびこらせないためにも非常に重要だと思います。

その意味で言えば、グローバルサウス対策の一環であった2024年8月の岸田前首相による中央アジア訪問の突然のキャンセルは非常に痛く、しかも、そのリカバーがまだ十分になされていないところも問題です。

中央アジアは、大国ロシア・中国の狭間にあって、また、最近は欧米の中央アジアへの関心も特に高まっている中で、まさにバランス外交を展開しているわけですが、彼らが一番関係を強化したいのは実は日本なのです。

日本は信頼できる先進国であり、多くの資金的・技術的援助をしてくれる一方、政治的な押し付けや脅迫などをしてこない稀有な国だと見られています。

そのように見ている国は中央アジアだけではないはずです。日本の国際的な評価を生かし、各国との国際関係を、一つ一つ丁寧に積み上げていくことが大事だと思います。

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