コラム

バイデン政権の復古的中道主義は可能か

2021年01月12日(火)14時00分

バイデン政権下では中道派が主導権を握ることになるものの、民主党左派は必ずしもこの政治的現実に納得しない...... REUTERS/Kevin Lamarque

<バイデン政権を取り巻く政治的環境は、連邦議会の微妙なバランスと共和党側のミスによる敵失によって、復古的中道主義を選択することが短期的に可能な状況となっているが......>

バイデン政権の主要閣僚人事が発表された。一部のポストを除いて、極端に左派的な人事は行われておらず、中道派のバイデンカラーが前面に押し出された形となっている。このような人事は連邦上院・下院ともに民主党が僅差で過半数を制している現実を踏まえたものと言えるだろう。

中道派の上院議員達の政治的影響力は極めて高いものとなる

1月5日上院特別選挙で過半数を得たバイデン政権は、政策の選択肢が大きく広がった状態にある。上院投票結果が民主党50:共和党50であった場合、副大統領であるカマラ・ハリスが裁定投票で決着をつけることが可能になったからだ。したがって、政治的な無理をすれば左派的な政策を通せる環境とも言えるし、それをブラフに共和党側を中道左派の政策に妥協させやすくなったとも言える。

バイデン政権の共和党側カウンタ―・パートでは、ミッチー・マッコーネル上院院内総務だ。寝業師として知られるマッコーネルはバイデン次期大統領とも関係が長く、オバマ政権時代には民主党・共和党の妥協点を探ってきた仲でもある。マッコーネルはトランプ政権時代の政治環境では民主党に対して強面の対応をしてきたが、今回与えられた新しい政治環境ではバイデン政権に左派的な政策を取らせないために適度な妥協を図ることが予測される。

一方、上院の民主党・共和党内では自らの政治生命や思想信条のために相手党派に政治的に妥協する傾向がある議員も存在している。共和党側であればスーザン・コリンズ(メイン州)、リサ・ムルカワスキ―(アラスカ州)、民主党側であればキルステン・シネマ(アリゾナ州)、ジョー・マンチン(ウェストヴァージニア)などだ。そして、2022年中間選挙で改選となる民主党のマーク・ケリー(アリゾナ)、キャサリン・マスト(ネバダ)、マギー・ハッサン(ニューハンプシャー)なども左派色が強い政策には反対するかもしれない。これらのスウィングする中道派の上院議員達の政治的影響力は極めて高いものとなるだろう。したがって、バイデン政権が推進する政策の帰結は彼らの動向に注視するだけでおおよそ判断可能となる。

左派は、増税や規制強化など妥協的取引を引き出す

ただし、バイデン政権下においては中道派が主導権を握ることになるものの、民主党左派は必ずしもこの政治的現実に納得しないものと思う。サンダースを始めとする議員達は当面は、トリプルブルー環境において議会の各委員会委員長ポストを手に入れることで、政治的な論点設定を左派側に有利なものに設定することに注力するはずだ。

したがって、その全てではないものの、増税や規制強化などの幾つかの政治的イシューについて中道派から左派への妥協的取引を引き出すものに成功するだろう。この傾向は2021年政権発足直後よりは中間選挙が近づいて、左派勢力の選挙運動力・小口献金集金力が必要とされる2022年に鮮明になるものと推測される。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イランとの交渉に「満足せず」 濃縮停止

ワールド

英がイランから職員退避、各国で渡航自粛の動き 中東

ワールド

クリントン氏、エプスタイン氏の犯罪「全く知らず」 

ワールド

IAEA、イランに核査察許可求める 「不可欠かつ緊
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story