最新記事
テクノロジー

トランプ新政権の看板AIインフラ事業で露呈した、マスクとアルトマンのAIウォーズ

Elon Musk is already playing spoiler to Trump's AI plans

2025年1月23日(木)15時52分
イーロン・マスク

大統領就任式後の集会で。トランプの就任はこんなに嬉しいのに、その顔に泥を塗るのもためらわなかったマスク(1月20日) Sam Greene/USA TODAY Network / USA TODAY NETWORK via Imagn Images

<イーロン・マスクの性格と、アルトマンとのライバル関係を考えれば、巨額プロジェクトが最初から危機に陥ることはわかったはずだが>

ドナルド・トランプ米大統領は1月21日、人工知能(AI)インフラ整備に5000億ドル(約78兆円)を投資する新事業「スターゲート」の立ち上げを発表した。ヘルスケアなどの産業で発展を遂げるとともに、アメリカをAI分野のリーダーに位置づけることを目指す計画だ。

だがこの発表からわずか数時間後、起業家のイーロン・マスクがこの鳴り物入りのプロジェクトにケチをつけた。

本誌はこの件について、マスクがCEOを務めるスペースXとホワイトハウス報道官にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

マスクは2024年11月の米大統領選でトランプを勝利させるために1億ドル以上の献金を行い、選挙の後はトランプの側近として存在感を増している。トランプが新設した政府効率化省(DOGE)のトップに任命されるなどトランプと親密な関係を築いてきたが、今回ホワイトハウスの推進する大型イニシアチブを批判したことでトランプの機嫌を損ねることになりそうだ。

スターゲートはソフトバンクグループ、オープンAI、オラクルやMGXなどの大手ハイテク企業が共同で進めるプロジェクトだ。同プロジェクトには今後4年間で4000億ドルが投じられる予定で、このうち1000億ドルの投資が直ちに開始される。

ソフトバンクが財務管理を、オープンAIが運営を担うことになっており、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がプロジェクトのチェアマン(会長)に就任する。

「彼らは金を持っていない、確かだ」

マスクはトランプがこの新事業を発表した数時間後、X(旧ツイッター)で批判を展開した。

「実際のところ彼らは金を持っていない」とマスクはXに書き込み、さらにこう続けた。「ソフトバンクが確保している資金は100億ドルを大きく下回る。確かな筋からの情報だ」

マスクはオープンAIと同社CEOのサム・アルトマンを相手取って訴訟も起こしている。オープンAIは非営利で設立されたのに公共の利益よりも営利を優先していると主張し、オープンAIの共同創業者の一人でもあるマスクは22日午後、「サムは詐欺師だ」とX上で批判した。

アルトマンが「私はオープンAIの株式を保有していない。純粋に会社が好きだから運営している」と述べている動画を共有したXへの投稿に対して、マスクは「これもまた大嘘だった」と書き込んだ。

別のユーザーはマスクがオープンAIを批判している動画を共有。この動画の中でマスクは「オープンAIの『オープン』はオープンソースを意味しているはずだったし、同社は非営利のオープンソースとして設立された。だが今では最大の利益を追求するクローズドソースになってしまった」と述べている。

マスクは22日、この動画を共有した投稿に「そのとおり」とコメントを付け、さらに今回発表されたAIインフラ整備事業への5000億ドルの投資について「馬鹿げた数字であり、誰も真剣に受け止めるべきではない」と批判した別の投稿を拡散した。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中