最新記事
イギリス首相

【ひと】14年ぶりに保守党から政権を奪い返した労働党のキア・スターマー英首相(61)

Who is Sir Keir Starmer, Britain's New PM?

2024年7月8日(月)17時42分
ジェームズ・ビッカートン
スターマー英労働党党首

14年ぶりの政権交代でイギリスの新首相に就任したスターマー英労働党党首(7月8日) SCOTT HEPPELL/Pool via REUTERS

<保守党のたび重なる不祥事を追い風に総選挙に大勝した中道路線の担い手>

キア・スターマーが英労働党の党首に就任したのは2020年4月。労働党は前年12月、当時のジェレミー・コービン党首の下で戦った総選挙で大敗していた。

【動画】シャーロット王女、早くも「完璧なカーテシー」をマスター...伝統を重んじる仕草に目を奪われる人が続出

スターマーは労働者階級の家庭出身の元弁護士。08~13年にイングランドとウェールズの検察トップを務め、これによりナイトの称号を得た。議員に初当選したのは2015年5月の総選挙だ。

労働党の党首になってからは、路線をコービン時代の左派から中道へと転換。またコービン時代の労働党内に反ユダヤ主義があったことを指摘する報告書を受けて、コービンの党員資格を停止した。

今回の総選挙での労働党の大勝とスターマー首相誕生の背景には、与党・保守党がここ数年の間に積み上げてきたスキャンダルと危機があった。中でも「パーティーゲート」――新型コロナウイルスのパンデミックにより、イギリスが厳格なロックダウンを行っていた最中に、当時のボリス・ジョンソン首相や著名な政治家たちがパーティーや会合を開いていた問題は、国民の政治不信を招いた。

在任期間45日という最短記録で辞任したリズ・トラス首相は、大型減税を打ち出すなどして経済に混乱を招き、政治にもさらなる不信を招いた。

労働党の経済政策の柱は、イギリスの安定と成長の回復だ。この政策に関しては、経済界からの信頼は勝ち得ているものの、税制に関する方針がしないとの批判もある。また、機能不全に陥っている国民保健サービス(NHS)の改革も目指す。

「難民の強制移送」制度は見直しへ

総選挙のマニフェストにおいて労働党は、リシ・スナク前政権下で導入された、不法移民をルワンダに強制移送するシステムを撤廃するとしている。このシステムは多くの批判を浴びた上、最高裁判所が違法判断を示したため、一度も実施されていない。

過去数年の間に、小船に乗って英仏海峡を渡りイギリスにやってきた不法移民は数万人に及ぶ。移民全体の急増も相まって、イギリスでは国境警備が政治課題となっている。

昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃の後、イスラエルがガザへの水と電気の供給を遮断したことについてスターマーは「イスラエルにはそうする権利があると思う」と発言して党内からも批判を浴びた(スターマーは『いかなる行為も国際法の枠内で行われるべきだ』とも述べた)。2国家共存に向けた和平プロセスの一環として、パレスチナ国家を承認するというのが労働党の方針だ。

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中