最新記事
日本社会

日本社会は「ワーキングプア」の人たちに支えられている

2023年12月13日(水)14時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
エッセンシャルワーカー

多くのエッセンシャルワーカーもワーキングプアの状態にある(画像はイメージ写真) fadlikus/Shutterstock

<生産年齢の有業者の約半分が年収300万円以下で、600万円以上は2割もいない>

社会は、国民の一定数が働くことで成り立っている。働く人が働かない人を支えるという意味で、前者に対する後者の比率は「従属係数」と言われる。高齢化の進展もあり、この値は年々高まる一方だ。

生産年齢人口(15~64歳)と高齢人口(65歳以上)を並べてみると、1950年頃は前者12人で後者1人を支える「お神輿」型だったが、今世紀の初頭に3人で1人を支える「騎馬戦」型になり、近い将来には「1:1」の「肩車」型になるという。これでは社会が成り立たないと、社会保障制度の見直しについて議論されたり、高齢者の役割革新が促されたりしている。


なお、支える側(働く人)も一枚岩ではない。従業地位では正規雇用、非正規雇用、自営(フリーランス)に分かれ、収入が多い人もいれば少ない人もいる。年収階層ごとの有業者数をヒストグラムにした図をみると、時代とともに、上が細く下が厚い「ピラミッド」型になってきている。

国民を有業者と無業者、さらに前者を大雑把な年収階層で分けたグラフにしてみると、日本社会の構造がリアルに分かる。2022年10月時点の年齢別人口を、こうした観点から色分けすると<図1>のようになる。

data231212-chart01.png

年齢別人口の量を見ると、70代前半と45~54歳の部分に山がある。団塊と団塊ジュニアの世代の人たちだ。高齢層と20歳未満の未成年では、無業者が大半を占める。

両者の間の生産年齢層が働いているわけだが、3つの年収階層に分けてみると、年収300万円未満の人が多い(約半分)。一昔前では普通とイメージされていた年収600万円を超える人は、有業者の中では2割もいない。下が厚く上が細い「ピラミッド型」で、この上に、働いていない被扶養人口(白色)がのしかかっている。

今の日本社会はまさに、働く貧困層(ワーキングプア)によって支えられている、と言っても過言ではない。図の赤色の中には、エッセンシャルワークも多く含まれる。あえて時短勤務を選んだり、配偶者控除をにらんで収入を抑えたりしている人もいるが、決してそういう人ばかりではない。やむなく低賃金に耐えている人が多いのであり、だからこそ「ワーキングプア」という言葉が生まれ、流行語にもなっているわけだ。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米議会予算局、トランプ関税による財政赤字削減予測を

ワールド

米、日本への支援「揺るぎない」 国務省報道官が投稿

ワールド

イラン、米との核協議再開に向けサウジ皇太子に説得要

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、12月利下げに「不安」 物価デー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中