最新記事

事件

スパイ防止法違反など37の罪で起訴されたトランプ 機密文書持ち出し問題で正当性立証は困難か

2023年6月12日(月)12時53分
トランプのバスルームに置かれていた文書保管用の箱

米司法省が公表した、トランプ氏のフロリダ州の別宅のバスルームに置かれていた文書保管用の箱。2021年撮影(2023年 ロイター)

ホワイトハウスからの機密文書持ち出し問題で起訴されたトランプ前米大統領が、自らの正当性を立証するのは極めて難しい。法制度と事実関係の両面とも、トランプ氏に有利な要素が見当たらないからだ。複数の法律専門家はこうした見方をしている。

フロリダ州の連邦地裁が9日開示した起訴状によると、トランプ氏はスパイ防止法違反や司法妨害の共謀、偽証など37の罪に問われている。

国家安全保障に関する法律専門家らが衝撃を受けたのは、起訴状で示された書類や写真、テキストメッセージ、音源、関係者発言などの証拠の幅広さだ。これらは、トランプ氏が不正な手法で機密文書を持ち出し、そうした事実を隠ぺいしようとしたという検察側の主張を強く裏付けているという。

ブレナン・センター・フォー・ジャスティスの国家安全保障法専門家、エリザベス・ゴイテイン氏は「詳しく見ていくと、このような機密文書の取り扱いのずさんさと、連邦捜査局(FBI)に渡そうとしないための一致した取り組みという観点で、かなりショックだ」と述べた。

トランプ氏の弁護団はコメント要請に応じていない。トランプ氏本人は一貫して無実を主張するとともに、訴追は政敵による「魔女狩り」だとの見解を繰り返している。9日には自身が立ち上げたソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで「罪など何も存在しない。司法省とFBIが私に対して何年も行ってきたものを除けば」と投稿した。

起訴内容の中で有罪となれば最も重い刑が科せられるのは司法妨害の共謀で、最大で20年の禁錮刑が待ち受けることになる。

法律専門家の見解では、トランプ氏が召喚状の対象となった文書を保持していると認識しつつ、提出を拒否した上で、弁護団に対してFBIをごまかすよう促したことが証拠で示されているもようだ。

保守系シンクタンクのケイトー研究所の法律専門家、クラーク・ニーリー氏は「これは想像し得る限りで最も明確な司法妨害だ」と語った。

ある弁護士は、司法妨害は被告を弁護するのが特に難しいと解説。「それは人々の気分を害し、正当な司法手続きから事態を隠し、ほとんどの人はなぜ罪になるのかを理解している」と付け加えた。

トランプ氏が何年も機密文書を隠し続けようとしたとされる問題こそ、ジャック・スミス特別検察官がトランプ氏起訴を決めた大きな要因の1つになった公算が大きい、というのが法律専門家の見立てだ。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米イーベイ、第2四半期売上高見通しが予想下回る 主

ビジネス

米連邦通信委、ファーウェイなどの無線機器認証関与を

ワールド

コロンビア、イスラエルと国交断絶 大統領はガザ攻撃

ワールド

米共和党の保守強硬派議員、共和下院議長解任動議の投
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中