最新記事

中国

もはやゼロコロナをやめても中国経済の凋落は不可避...習近平「Dの四重苦」とは?

Xi’s Fourfold Economic Woes

2022年12月14日(水)16時26分
ゾーイ・リウ(米外交問題評議会フェロー)
建設中のマンション

マンション建設を進めていた不動 産大手・中国恒大集団は経営難に BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<不動産不況による需要減と債務、米中分断、少子高齢化という難題。中国経済の足を引っ張る「4つのD」を読み解く>

先の中国共産党第20回全国代表大会で、習近平(シー・チンピン)はついに従来の慣例を破り、総書記として異例の3期目に突入した。そして党の最高指導部である政治局常務委員会から汪洋(ワン・ヤン)などの改革派を一掃し、自らに忠実な男たちで指導部を固めた。

これが中国経済に、そして中国と世界各国の貿易関係に暗い影を落とすのは必至だ。象徴的だったのは、党大会の閉会式で自身の前任者・胡錦濤(フー・チンタオ)を無理やり退席させたこと。胡は鄧小平直系の改革派だ。

その人物の無念の退場は、40年ほど前に鄧小平が始めた「改革と開放」の時代の終焉を予感させた。党大会ではいわゆる「ゼロコロナ政策」の継続も確認された。むろん、その社会経済的なコストは莫大だ。

党と政府がゼロコロナにこだわればこだわるほど、中国経済は首を絞められることになる。しかし、それを中国経済の直面する最大の問題とみるのは間違いだ。たとえ習が明日ゼロコロナ政策を撤回しても、既にそのせいで生じてしまった損害は回復できない。

そもそも経済は、習の命令ひとつで動かせるものではない。一部のエコノミストは依然として中国の潜在的な成長率を年率8%程度と見積もっているが、その実現は不可能に近い。

なにしろ今の中国経済は「4つのD」に足を引っ張られている。デマンド(需要)、デット(債務)、デカップリング(切り離し)、デモグラフィー(人口動態)の4つだ。

以下、この4つのDを個別に検討してみよう。

デマンド(需要)

たとえゼロコロナ政策をやめても、中国の輸出品に対する国外の需要が増えるとも、内需の持続的拡大が促されるとも思えない。来年いっぱい、中国には世界経済の減速と外需の減少による輸出の伸び悩みという強い逆風が吹き続けるだろう。多くの国ではインフレが進んでいるし、新型コロナの爆発的感染で急増したマスクや使い捨て注射器などへの需要が減っているからだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中