最新記事

ネオナチ

NATOが慌てて削除、ウクライナ女性民兵の紀章「黒い太陽」はなぜ問題か

NATO Says It Didn't Notice Ukraine Soldier's Apparent Nazi Symbol in Tweet

2022年3月10日(木)18時46分
トム・オコナー

ウクライナとナチスとの関係は、国内外で大きな議論のテーマになっている。ウクライナは1941年から1944年にかけてナチス・ドイツに占領された。この時、一部のウクライナ人は侵略者に抵抗したが、ソ連からの独立を模索していたステパン・バンデラのようなナショナリストたちは、ナチス・ドイツと協力してソ連と戦うことを選んだ。現在のウクライナでは、ナチス・ドイツによるホロコーストも、その約10年前にソ連の統治下にあったウクライナで起きた人為的な飢饉「ホロドモール」も、ウクライナ人に対するジェノサイド(大量虐殺)だったと見なされている。

1991年に独立を果たした後のウクライナでは、ビクトル・ユーシェンコ元大統領をはじめとする一部の指導者が、バンデラのレガシーを高く評価してきた。それにより、ウクライナ・ロシア間の緊張が深刻化。2014年の反政府デモで西側諸国との関係強化やNATOとの連携を目指す政府が誕生すると、ロシア政府はウクライナを「極右勢力が率いている」と主張した。この西側寄りの政権の誕生が、ウクライナ東部での親ロシア派による武装蜂起、そして南部クリミア半島のロシア併合につながった。

「ナチ化」阻止は本当か

本誌はこれまでにも、ウクライナ軍と民兵組織の中に極右やネオナチの支持者がいると報じ、複数の専門家や元当局者に話を聞いてきた。彼らは軍や民兵組織の中にそうした者がいること、そして彼らが(ロシアによるウクライナ侵攻の前もその後も)西側諸国からの軍事支援を得ることについて、警鐘を鳴らしていた。

一方で彼らは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対する「特別軍事作戦」はウクライナの「非ナチ化」のためだと正当化したことについては、「プロパガンダ」だとして一様に異議を唱えた。極右は「ユーロマイダン(2014年にウクライナで起きた反政府抗議運動)」で一定の役割を果たしたが、隣国ロシアと地政学的に距離を置くことを求めるウクライナ社会のより幅広い層とも協力した。

ロシアはウクライナ侵攻のせいで、国際社会から政治的にも経済的にも孤立しつつあるが、それでもロシアの当局者たちは、ウクライナ国内で活発に活動する極右の存在を強調し続けている。

「ヨーロッパがつくり出した病的な雰囲気や憎悪が、ウクライナのナショナリストたちを、取り返しのつかない行動に走らせないという保証はどこにもない」と、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は3月9日の会見で述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NEC委員長、雇用の伸び鈍化見込む 人口減と生産性

ワールド

中国BYD、米政府に関税払い戻し求め提訴 昨年4月

ワールド

EU、第三国の港も対象に 対ロ制裁20弾=提案文書

ビジネス

ECB現行政策「適切」、インフレ率は目標に収束へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 10
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中