最新記事

事件

牧師夫妻、教会の地下室に8人を監禁していた 最長14ヶ月...米

2022年1月28日(金)12時15分
青葉やまと

アトランタ郊外で、牧師とその妻が教会の地下に8人を監禁していた Fox5 Atlanta-YouTube

<急病人の救護要請がきっかけで発覚。これ以前にも近隣の女性住民は、ある不自然な兆候に気づいていた>

米ジョージア州アトランタ郊外で1月13日、地下に監禁されていた8名の人々が救出された。現場は教会であり、教会を運営するカーティス・バンクストン牧師(55)とその妻のソフィア・シム=バンクストン(56)が不法監禁の容疑で逮捕された。

明るみに出たきっかけは、救急隊への出動要請だった。救護要請を受けたアトランタ郊外・グリフィン消防署の救急隊員が1月13日午前、現場に急行した。グリフィン市内の教会「ワン・ステップ・オブ・フェイス セカンド・チャンス」において、発作を起こした人物がいるという。

隊員たちはバレーロード沿いに建つ、一見民家のように見える教会に到着した。平屋のつつましい造りだが、建物には外からわかりづらい地下室への階段があった。

地下に降りるとドアは2重のデッドボルトで施錠され、鍵なしには内側からも外側からも解錠できない状態であった。救急隊員たちは救助のため、ドアに設けられた窓部分から室内に侵入しなければならなかったという。救急隊は「緊急事態が生じた場合に住宅から脱出できないため、極めて危険」な状態であったと指摘している。

こうして地下室内にたどり着いた救急隊が見たものは、監禁状態に置かれた8名の人々であった。

教会は偽装か

教会は偽装であり、実質的な施設の主体は無許可の私設グループホームだった可能性がある。米CBSアトランタ支局は、「教会を装い、無認可の『グループホーム』、あるいは私設介護施設を運営」していたと報じた。

被害者の年齢は25歳から65歳までとさまざまで、多くが精神的あるいは肉体的な障害をもっていた。その後の捜査により、牧師夫妻は被害者たちの金銭を管理下に置き、公的給付金も管理していたことが判明している。得られた金銭を使って適切な世話をしているわけでもなく、必要な薬と医療が提供されないこともしばしばだった模様だ。

グリフィン消防署から通報を受けた州警察が捜査を進めたところ、虐待およびネグレクト(必要なケアの放棄)の形跡が確認されている。高齢者福祉部門および福祉担当部門が被害者のケアをすでに引き継ぎ、保護の翌日までに全員に新たな住み処が手配された。

米ピープル誌は、牧師夫妻がこの建物を過去14か月ほど借り受けており、その間「地下室をこれらの人々を収容する私設ケアホームとして利用し、実態としては彼らの意志に反して監禁していた」と伝えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中