最新記事

環境

ドイツ、気候目標達成には今後8年でエネルギー使用20〜25%削減が必要

2022年1月12日(水)10時19分
ドイツの火力発電所

ドイツのハベック副首相兼経済相(気候政策担当)は11日、ドイツが設定した気候保護目標の達成には非常に大きな課題に直面しており、今後8年間でエネルギー使用量を最大25%削減する必要があるとの報告書を発表した。写真は2020年2月撮影(2022年 ロイター/Wolfgang Rattay)

ドイツのハベック副首相兼経済相(気候政策担当)は11日、ドイツが設定した気候保護目標の達成には非常に大きな課題に直面しており、今後8年間でエネルギー使用量を最大25%削減する必要があるとの報告書を発表した。

報告書によると、今後10年間で二酸化炭素(CO2)の排出量を1990年の65%に削減するという目標を達成するには、エネルギー消費量の20─25%を削減することが必要となる。

ハベック氏は記者会見で「この課題は大きい。非常に大きい」と述べ「10年から20年までは毎年平均1500万トンの排出量を削減できた。22年から30年までに毎年平均4000万トンの排出量を削減する必要がある」と指摘した。

ドイツが最大の加盟国となっている欧州連合(EU)は、30年までに排出量を1990年比で55%削減する目標を掲げている。気候変動による最悪の事態を回避するために設定された、2050年までに排出量を「実質ゼロ(ネットゼロ)」にするという国際連合の目標に向けた一歩となる。

しかし、地球温暖化による海面上昇が家族の農場を飲み込んでしまうと訴えた女性が起こした訴訟に対する憲法裁判所の昨年の判決により、ドイツはより厳しい目標の設定を余儀なくされた。

ハベック氏は、現在2ギガワットの陸上風力発電容量を、来年までに5ギガワット(GW)、27年までに10GWへそれぞれ拡大することを政府は目指していると指摘し、風力発電所や太陽光発電所への国の支援はさらに20年間継続される可能性が高いと付け加えた。

世界風力エネルギー会議(GWEC)のデータによると、1GWの風力発電容量は年間約130万トンのCO2を削減する。

ドイツでは、水素インフラを整備する間、風や日差しが弱い日のバックアップとして引き続きガスが必要になるが、ハベック氏は「石炭を単純にガスに置き換えるべきではない。それでは振り出しに戻ってしまう」と語り、ガスを他の化石燃料の長期的な代替物と見なすべきではないとの見解を示した。

ドイツ連邦統計庁の11日の発表によると、毎月の純収入が1300ユーロ(1475ドル)未満のドイツの世帯は、直近の年次データである20年に総支出の約10%をエネルギーに費やしている。全ての所得階層で、エネルギー費が消費支出の6.1%を占め、19年の5.8%から上昇した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中