最新記事

ヨーロッパ

多数の難民を受け入れたスウェーデンが思い知った「寛容さの限界」

The Limits of Benevolence

2021年11月24日(水)12時17分
ジェームズ・トラウブ(ジャーナリスト)

かつての「過激」が主流に

6年前に話を聞いたとき、ヤンセはスウェーデン民主党にあまり好意的ではなかった。同党の支持率は20%前後で推移している。中道の諸政党が移民問題に関してスウェーデン民主党の主張を取り入れていなければ、この数字はほぼ確実に伸びていただろう。

「2015年には過激とされていたものが、今は主流になっている」と、ヤンセは言う。

古い理想の放棄は、スウェーデンの進歩派を深く失望させている。ストックホルムのシンクタンク、アレーナ・イデーのリサ・ペリング研究主任は、大規模な難民の流れを食い止めるために「何かをする必要があった」ことは認めるが(15年に話を聞いたときは認めていなかった)、落ち着いた後は規制を撤回するべきだったと考えている。

とはいえ、スウェーデン人の寛容さも限界かもしれない。16年度は難民のために、国家予算の5%以上に当たる60億ドルを費やしている。

5年前の記事タイトルは、私が思っていたほど扇情的ではなかったのだ。もちろん、スウェーデンは今も非常に豊かで、それなりに平等主義的で、とても安全な国だ。しかし、この20年で、いにしえから続いてきた同質の文化が、事前の意思表示も公の議論もなしに、驚異的な規模で人口動態の変化にさらされた。

アメリカは1924年に外国生まれの市民が人口の約15%に達した時点で、移民に対して事実上、門を閉ざした。スウェーデンでは現在、移民が全人口の20%を占め、労働移住や家族の呼び寄せで年間約10万人(人口の約1%)のペースで増え続けている。

彼らの大多数は、スウェーデンと全く異なる社会──より教育水準が低く、より世俗的ではない社会──から来た。こうした変化に対し、スウェーデンは「死」を選ばず、生き残るために大切な価値観を変えたのだ。

EUは15年夏の終わりから100万人以上の移民・難民が押し寄せたことを受けて、16年にトルコと合意を締結。トルコが移民の欧州流入を抑制する代わりに、EUがトルコに資金援助をすることなどを取り決めた。これは根本的な人道的危機に対処することなく、問題を政治的に解決しようとするものだった。

現在、EUの東の端で続いているにらみ合いは、それぞれの思惑を暴露している。ベラルーシは中東などからの移民をポーランドやリトアニアに送り込み、ヨーロッパを脅かそうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上

ワールド

イラク南部の巨大油田に攻撃、3人負傷 イラン国境に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 7
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 8
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 8
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中