最新記事

韓国

インド太平洋の安保同盟、QUADとAUKUSから取り残される韓国

2021年10月27日(水)18時58分
佐々木和義

さらにF35のアジアの整備拠点は韓国が戦犯企業に挙げている三菱だ。一定の飛行時間ごとに行われるメンテナンスやオーバーホールと修理など、国際整備拠点「MRO&U」で行う決まりで、自衛隊と在日米軍や在韓米軍等のF35は愛知県にある三菱重工業のF35最終組立施設「FACO」で行われる。

韓国軍が指定可能な「MRO&U」は愛知県の「FACO」とオースラリアのウィリアムズタウン、米国のフォートワースで、直行可能な「MRO&U」は三菱しかない。韓国からウィリアムズタウンへは韓国の清州空軍基地から米国のグアム空軍基地やオーストラリアのタウンズビル空軍基地を経由するなど片道だけで最低3日はかかる。フォートワースへの自力飛行は不可能だ。

「クアッド」と「オーカス」から取り残される韓国

10月13日、李秀赫(イ・スヒョク)駐米韓国大使は国政監査で、「クアッド(QUAD:日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による外交・安全保障の協力体制)」参加に関する野党の質問に「当分の間は参加国を増やす考えがないことを米国側と確認した」と答弁した。

クアッドは安倍晋三元首相が提案し、トランプ前大統領が共感して発足した安保協議体で、米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国が参加する中国包囲網だ。トランプ政権は韓国やシンガポールなどを加えた「クアッド・プラス」構想を掲げたが、「軍事は米国、経済は中国」という二股外交を掲げていた文在寅政権が参加を拒絶した。

コロナ禍の長期化で、中国との蜜月関係の構築が厳しくなった文在寅政権は、招待されたら検討する方針に転化したが、バイデン政権が韓国を招待することはなく、米国が韓国をクアッドに参加させる意思がないことを明確に示したことになる。

英国は9月15日、米国、オーストラリアと3カ国同盟「オーカス(AUKUS)」を結成すると発表した。クアッド参加国の中で中国から距離があるオーストラリアの軍事力が強化され、また将来的にオーカスとクアッドが連携するとみられており、英国がアジアの安保に関与できるようになる。

クアッド参加国のオーストラリアとインドは英連邦の一員で、トランプ政権がクアッド・プラス構想で言及したシンガポールは英国の軍事同盟に属しており、台湾は米国製ミサイルを整備する計画だ。

計画性と運用に不安がある韓国は、日本が提唱し英米が主軸となって自由経済諸国が構築するインド太平洋の安全保障ネットワークから取り残されることになる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ

ワールド

全米で反トランプ氏デモ、「王はいらない」 数百万人

ビジネス

アングル:中国の飲食店がシンガポールに殺到、海外展
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中