最新記事

ブルーオリジン

カーク船長の宇宙飛行に黒い疑惑──生命を尊重する『スタートレック』とは大違い?

Ex-Blue Origin Communications Head 'Worried We're Becoming Ferengi of Our Own Story'

2021年10月13日(水)16時49分
アイラ・スリスコ
ニューシェパードの乗組員(左から2番目がシャトナー)

ブルーオリジンの宇宙船でシャトナー(左から2人目)を含む4人の民間人が宇宙をめざす YouTube-Reuters

<『スタートレック』のカーク船長ウィリアム・シャトナーの搭乗で話題のブルーオリジンの宇宙船打ち上げに、元社員ら21人が内部告発>

ジェフ・ベゾスが経営する民間宇宙企業ブルーオリジンが、SF人気シリーズ『スタートレック』のカーク船長を宇宙に送る準備をするなか、同社の元社員アレクサンドラ・エイブラムスは、人類は「現実というドラマにおけるフェレンギ(スタートレックに登場する貪欲な異星人)のような存在になろうとしている」と警告した。

宇宙船エンタープライズ号のジェームズ・T・カーク船長役で有名な俳優ウィリアム・シャトナーは今まさに「新しい生命と文明を求め人類未踏の宇宙に勇敢に航海」しようとしている。13日に打ち上げ予定のブルーオリジン社の有人宇宙船「ニューシェパード」に搭乗し、成功すれば今年90歳になる彼は宇宙飛行をした最高齢の人物になる。

だがブルーオリジンの元社員で従業員コミュニケーション担当責任者だったエイブラムスは、この無謀な企ては、人間がフェレンギのようになってしまった証拠だと言う。フェレンギとは、『新スタートレック』から登場する異星人で、耳は大きく頭はでこぼこ、そして金儲けを何よりも優先する拝金主義が特徴だ。

金儲け主義を批判

「宇宙船ニューシェパードの打ち上げが成功することを心から願っている。私は『スタートレック』を見て育ち、2019年にワシントン州ケントにあるブルーオリジン本社を訪れたシャトナーを、ベゾスが案内したときのことを覚えている」と、エイブラムスはCNBCの記者マイケル・シートが入手した最近の声明の中で述べた。

「シャトナーは、自由と生命を尊重するスタートレックの「惑星連邦」の象徴だが、現実のわれわれはまるで逆だ」と、彼女は書く。「人類は、この現実において、フェレンギのような生き物になろうとしているのではないか」

エイブラムスは今年9月、他の20人の現役および元社員と共同で公開書簡を書き、ブルーオリジンは「有毒な」職場環境を作り出している、と非難。同社が「性差別に目をつぶり、安全性に対する不安を無視し、間違いを正そうとする人々を沈黙させている」と主張した。

ブルーオリジンは「エイブラムスは2年前に解雇した社員だ」と反撃。また、「ニューシェパードはこれまでに設計または建造された最も安全な宇宙船であると信じている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中