最新記事

アフガン情勢

米軍、アフガニスタン完全撤退へカウントダウン タリバンは空港の掌握準備

2021年8月29日(日)18時30分

アフガニスタンからの米軍撤退が最終段階に入った。西側の安全保障当局者が29日、ロイターに明らかにした。写真は28日、カブール空港で監視にあたる兵士ら(2021年 ロイター/U.S. Marine Corps/Cpl. Davis Harris/Handout via REUTERS)

アフガニスタンからの米軍撤退が最終段階に入った。カブール空港で待つ1000人余りの民間人がその前に退避することになると、西側の安全保障当局者が29日、匿名を条件にロイターに明らかにした。ただ、米軍による退避支援作戦の終了日時はまだ決まっていないという。

実権を握ったイスラム主義組織タリバン側は、すでに技術者を揃え、カブール空港の管理権全てを掌握する用意ができていると説明。匿名を条件にロイターの取材に応じた関係者は、「双方が迅速な権限移譲を目指しており、米国からの最終承認を待っている段階だ」と述べた。

米当局者によると、28日時点で空港内には退避作戦に当たる4000人弱の米兵が残っている。退避作戦のピーク時にいた5800人から減少した。

ホワイトハウスによると、米国と同盟国の支援により、この2週間で約11万3500人がアフガニスタンを出国した。

バイデン大統領は28日、カブール空港で新たな攻撃が実行される可能性が高いと明らかにした。西側の安全保障当局者によると、空港へ来る人たちはその後に減ったという。

カブール空港で26日に起きた自爆攻撃では、米兵13人が死亡したほか、多数の死傷者が出た。西側諸国やタリバンと敵対関係にある過激派組織「イスラム国」(IS)が同日に犯行声明を出した。

米政府は27日、アフガニスタン東部のパキスタン国境に近いナンガルハル州でISの攻撃立案者を無人機で攻撃し、2人を殺害した模様だと発表した。

バイデン氏は28日、この攻撃が最後ではないと述べ、「われわれは凶悪な(自爆)攻撃に関わった者を捕らえて償わせる」と語った。

バイデン氏はまた、現地は「極めて危険な状態」が続いていると説明。今後24ー36時間以内に新たな攻撃が仕掛けられる可能性が高いと軍司令官から報告があったとした。

一方、タリバンの報道官は28日、ロイターに対し、米軍のドローン攻撃はアフガン領土への明らかな攻撃であり、米国は事前に通知すべきだったと語った。また、この攻撃で女性2人と子供1人が負傷したと明らかにした。

タリバンは先に、空港での爆発に関与した容疑者の一部を拘束したと表明している。

同報道官は、タリバンは米軍撤退後、カブール空港の管理権をすぐに掌握し、数日以内に全閣僚を発表すると語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中