最新記事

韓国

脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メーカー誘致に舵を切っている

2021年5月14日(金)18時10分
佐々木和義

京畿道は「脱日本技術独立」を宣言したが......

2019年7月1日、日本政府が半導体・ディスプレーの核心素材であるフォトレジスト、フッ化ポリイミド、エッチングガスの3品目の韓国向け輸出管理を強化すると発表すると、京畿道がいち早く反応した。

韓国半導体メーカーのサムスン電子とSKハイニックス、また、ディスプレイメーカーのLGディスプレイとサムスンディスプレイは、いずれも京畿道内に拠点があり、サプラライヤーも多いことから、大きな影響を受けると思われた。

京畿道は「脱日本技術独立」を宣言し、素材・部品・装備の研究開発を行う道内企業に5年間で2000億ウォン以上を支援する予定を立て、また公共機関が韓国で戦犯企業とされている日本企業の製品を購入しない「不買条例」を制定した。

道内企業に対して20年7月までの1年間で300億ウォンを支援し、日本以外の企業誘致に取り組んだ。19年11月に世界最大の半導体装置企業である米ラムリサーチ社の誘致に成功。20年には半導体中古装置流通分野で世界トップのサープラスグローバルを誘致し、今年4月、産業用ガス製造企業である米国エアプロダクツ社と投資協約を締結した。

親会社は「戦犯企業」と言われていた

韓国は、日本政府がグループAから韓国を除外した措置を輸出規制と批判するが、輸出が不許可となる例はほとんどない。

輸出管理を強化した品目の多くが、日本企業が合弁あるいは単独で設立した韓国内の工場で、日本などから輸入した原料をもとに生産されており、韓国企業も日本から輸入した原料で"国産化"を進めている。

しかし、サムスンなど日本政府のさらなる規制を危惧する企業が、日本以外から原料を調達する多角化を画策しており、日本企業が影響を受ける懸念がある。

また、韓国がグループAからグループBに変わったことで、輸出手続きが煩雑になった。日本企業にとって、韓国工場での生産は煩雑な輸出手続きを簡素化でき、また韓国企業の要求に合わせて納入しやすいメリットがある。

韓国の自治体にとっても雇用を守ることができる上、韓国工場の生産品は韓国製にカウントされるため、国産化を推進したと主張できる。

京畿道をはじめ各自治体は、税制優遇のほか賃貸料の減免や法務、会計、人事労務、金融などの無料相談など、さまざまなインセンティブを用意して、日本企業等を誘致したい考えだ。

忠南道に投資を決めた日産化学とダイキン工業や京畿道に投資する昭和電工マテリアルズの親会社である昭和電工は、韓国では「戦犯企業」とされており、自治体が方針を大きく転換したといえそうだ。

(※編注:5月17日、一部修正しております。)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民党、総裁選の前倒しを判断へ 両院議員総会で決定

ワールド

アングル:防空壕で生まれた命に未来託す、戦争で人口

ワールド

焦点:「石破降ろし」予算編成に飛び火も、今秋逃せば

ワールド

中国乗用車販売、7月は前年比+6.9%に鈍化 ハイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 9
    経済制裁下でもロシア富豪はますます肥え太っていた…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中