最新記事

2020米大統領選

意外とタフなバイデンの対中政策

WHAT JOE BIDEN HAS IN STORE FOR CHINA

2020年10月2日(金)16時40分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

習近平とバイデンは米中新時代を築けるか(写真はそれぞれ国家副主席と副大統領だった2011年) NELSON CHING-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<トランプの過激な政策を逆手に「結果を生む外交の担い手」をアピール>

アメリカのドナルド・トランプ大統領は自分を取り巻く状況に怒っている。大統領選の支持率では、民主党のジョー・バイデン候補にリードされている。しかも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応を批判され、守勢に立たされている。そして、彼の怒りの矛先は中国政府へと向けられている。

言いたいことは山ほどあるようだ。コロナ禍の責任は中国にあるとトランプが語ったのは有名な話だ。マイク・ポンペオ国務長官も7月下旬、アメリカが過去半世紀近く続けてきた中国への「関与政策」は過ちだったと述べた。

その後もトランプ政権は中国への経済的な圧力を強めているが、まともな長期戦略にはまるでつながらないやり方だと批判も出ている。8月17日にトランプ政権は、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)への制裁を強化し、同社による外国製半導体の調達をさらに困難にすると発表した。

これに先立ちトランプは、中国のIT企業バイトダンス(北京字節跳動科技)が運営する人気動画投稿アプリTikTok(ティックトック)とアメリカ居住者の「取引」を禁止し、さらにそのアメリカ事業の売却命令を出した。騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の提供するメッセージアプリ WeChat についても、アメリカ国内での「取引」を禁止した。両社とも安全保障上の脅威ではない。

選挙戦が始まって以降、トランプは一貫して「バイデンが大統領になれば、中国への対応は弱腰になる」と主張し続けてきた。バイデンが副大統領を務めたバラク・オバマ前政権の8年間を思い出せ、と。

そう聞くと、バイデンは防戦一方で中国問題に触れるのをひたすら避けているのではと思うかもしれない。ところが実際は逆で、バイデン陣営はこの「弱み」を武器に変えようとしている。トランプの対中政策(特に貿易政策)は無謀で無益で、アメリカの労働者にも消費者にも何ももたらさないと訴えようというわけだ。トランプの強硬発言は「中国問題でまっとうな対応ができるのはバイデンだけ」とアピールするチャンスをつくってくれているようなものだ。

「(トランプの)物言いと政策は混乱の度を増しているように思える」と、バイデンの有力な外交政策アドバイザーは言う。「強気に構えるのと破れかぶれになるのとは違う」

目指すところはほぼ同じ

バイデンは中国に対する自らの考えを、きちんとした演説の中で国民に説明することになるだろう。中国の利己的な通商慣行や知的財産の窃取、サイバースパイといった問題に対し、同盟国と密接に協力し、統一戦線を組んで対応することの大切さを説くはずだ。「トランプのように強気の発言をしても、アメリカの利益を高めるために中国政府にうまく対処したことにはならない。(だが)われわれならそれが可能だし、その方策も示すつもりだ」と、バイデン陣営の上級アドバイザーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル閣僚、「ガザ併合」示唆 ハマスへの圧力強

ワールド

中国外相、米との関与拡大呼びかけ 対立に警鐘

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中