最新記事

医療

「緊急事態解除の日」遠い医療現場 他院が拒否した新型コロナ患者受け入れる聖マリアンナ病院の葛藤

2020年5月23日(土)14時31分

スタッフに指示を出す森川大樹医長。5月4日、神奈川県川崎市で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

エンジンをかけたままの救急車から、2人の救急隊員が素早く降り立ち、新型コロナウイルス感染が疑われる女性を乗せた担架を慎重に下ろした。小さな顔に酸素マスクをつけた高齢の女性を隊員ら医療スタッフが手慣れた様子で病院内に運び込む。その直後、救命救急センターには新たな患者が到着した。

神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院。新型コロナが世界で猛威を振るう中、同病院は他の医療機関が拒否した患者を次々と受け入れ、この感染症と戦う医療最前線の象徴的な存在となっている。

ロイターは数日にわたり、同県川崎市宮前区にある同病院の救急救命センターを取材、新型コロナ患者の治療にあたる専門チームに密着した。

同チームで働く医師や看護師たちは、時には防護服に身を固め、人生が絶望へと暗転しかねない患者の治療に格闘している。緊急事態宣言が徐々に解除され、病院の外では通常の生活が戻りつつあるが、取材から見えてきた病院の姿は異なる世界だった。

未曽有のパンデミック(世界的な大流行)から人々を守るという強い使命感とともに、彼らには残酷なまでに希望を奪い取るウイルスとここの先も数カ月にわたって戦わなくてはならない、という諦めのような思いも感じられた。異常な日々が常態化する中、医療スタッフの1人は、生と死が予測できたコロナ前の日常をほとんど思い出せない、と語った。

コロナ禍を封じる最後の砦である医療現場では、終息の兆しが見えない現実が今もなお続いている。

各種のデータを見る限り、日本は他の多くの国より、このパンデミックにうまく対応してきた。他国のような感染者の急増はみられず、4月中旬以降は新規感染者が減少傾向にある。これまでに確認された感染者は1万6000人超。世界で30万人近くが亡くなる中、死者は777人にとどまっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

〔情報BOX〕主要企業の想定為替レート一覧

ビジネス

米財政赤字、今後10年でさらに拡大 減税・移民減少

ワールド

ゲイツ財団、エプスタイン氏への金銭支払い否定 職員

ワールド

米下院、カナダ関税撤廃決議案を可決 トランプ氏に異
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中