最新記事

東南アジア

インドネシア警察、パプア武装独立運動組織を急襲2人殺害 外国人殺人事件に関連容疑か

2020年4月12日(日)20時23分
大塚智彦(PanAsiaNews)

パプア州の地元警察が、グラスベルグ鉱山の事務所・居住区画を襲撃した武装組織とおぼしきグループを急襲した。写真は労働者を乗せグラスベルグ鉱山へ向かうバス。 REUTERS/Muhammad Yamin

<対話路線の大統領が新型コロナウイルス対応に追われるなか、警察によるパプア独立派への圧迫が強まる>

インドネシアの東端、ニューギニア島の西半分を占めるインドネシア領パプア地方で地元治安当局がパプア人武装グループの潜伏先を襲撃。銃撃戦で2人が死亡し、1人が負傷、3人を逮捕し、現場から多数の武器を押収したことをパプア州警察当局が4月10日、一部メディアに明らかにした。

警察によるとこの武装グループは、3月30日にパプア州ミミカ県で「グラスベルグ鉱山」の事務所・居住区画が襲撃され従業員のニュージランド人(57)1人が死亡、インドネシア人2人が負傷した事件と関係した容疑がもたれているという(関連記事「武装組織襲撃で外国人含む3人死傷、独立運動で治安悪化が続くインドネシア・パプア」)。

 しかし一方で武装グループ側は警察や軍が今回殺害、逮捕したのは襲撃事件とは無関係の一般のパプア人市民で、警察による人権侵害であると批判を強めている。

パプア地方は武装組織による治安当局との衝突が相次ぎ治安状況が極めて悪いことを理由に、インドネシア政府は外国メディアを含めて自由な現地での取材を原則として認めていない。

さらにインドネシアで感染が拡大している新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環としてパプア州は空路、海路が封鎖状態となっており、治安当局によるインターネット接続などの通信制限もあるなど正確な現地の情報が適宜伝わりにくい状況にもある。

銃撃戦で3人死傷、武器などを押収

そんな現地の状況の中、人権問題に詳しい米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」のネットニュース「ブナ―ル・ニュース」が10日に伝えたところによると、9日にパプア州ミミカ県ティミカで警察と陸軍の合同部隊が寄せられた情報を基に武装グループの潜伏先を急襲した。

この際の銃撃戦で武装グループの2人が死亡し、負傷者1人を含む4人が逮捕された。その後の捜索で潜伏先から手製武器や弾丸162発、多数の弓矢、パプア独立のシンボルである「モーニングスター(明けの明星)旗」などが押収されたとしている。

パプア州警察のアハマッド・カマル報道官はブナール・ニュースに対して、死傷者を含む6人はニュージランド人らを襲撃した武装グループに武器を供給する役割を担っていたとの見方を示し「襲撃事件との関係は明らかである」との立場を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国BYDの欧州第3工場、スペ

ビジネス

再送-ロシュとリリーのアルツハイマー病診断用血液検

ワールド

仮想通貨が一時、過去最大の暴落 再来に備えたオプシ

ワールド

アルゼンチン中間選挙、米支援でも投資家に最大のリス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中